更新日:2016.04.22黄色いモクレン 交配の楽しみ
黄色いモクレン 交配の楽しみ
4月も半ばを過ぎて、サクラは終盤を迎え、いよいよ新緑がまぶしい季節になりました。
なんだろ坂には、平成11年から12年にかけて植えられた
数十本のマグノリア(モクレン科植物の総称)があって、
お互い競いあうように次々と咲いています。
8種類あるガールマグノリアのうちの「スーザン」。
甘い独特な香りがあります。
今、早咲きの白モクレンの仲間やソーランジアナ系(白モクレン X 紫モクレン)はほぼ終わり、
かわってガールマグノリア(シデコブシ X 紫モクレン)があでやかに咲く中に、
奇妙にもクリーム色の花をつけた4本の木が目を引いています。
これは、白モクレンと黄花品種「イエローバード」をかけ合わせてできたもので、
特に名前があるわけではありません。
北米東部にはアクミナータという学名のモクレンが自生していて、
これをアジア大陸産の白モクレンや紫モクレンと交配して、
新しい花を作ろうという試みが盛んに行われてきました。
原種アクミナータは、葉っぱと同時か、葉っぱが出たあとに緑がかった黄色の花を咲かせますが、
それも小さくて貧弱なので、お世辞にもきれいとは言えないのです。
これをなんとかして、葉が出る前に
もう少し豊満な黄色花を咲かせようというのが先人達の夢でした。
その結果、生まれた品種のひとつが「イエローバード」です。
では、さらにこの「イエローバード」[アクミナータ X (アクミナータ x 紫モクレン)]と
白モクレンをかけ合わせたらどんな花が生まれるでしょう。
実生(みしょう:交配してできた種から育てた植物)
1
活着が悪く、枯れたと思われて、すぐ脇にサクラを植えられてしまった株。
どっこい、しぶとく生きていました。
苦節20年、初めて花をつけました。
まるっこい小花で、クリーム色に紫色が現われています。
しかし同時に、6枚の花弁にちっぽけな がく が
3枚(これは紫モクレン、アクミナータに共通の特徴)、
残念ながら、これでは目標のボリュームに達しません。
実生2
クリーム黄色に赤いスジ(これも紫モクレン)が入った花、
雄しべもピンク、V型に直立し、後半になると外側にきれいに反転します。
これはアクミナータの交配種によく見られる現象です。
褪色が早いので、全体的に白っぽく見えます。
白モクレンの影響が濃そうです。
実生3
「イエローバード」とほとんど同じ色。
いわゆるうぐいす色で遠目にも目立つ花。
しかも、最外側のがくが白モクレン同様に大きく、ふっくらした9弁花に見えます。
「イエローバード」は6弁で、がくは小指の爪先のように小さいので、
これぞ出色、プレミアム付き、やったあー!と言いたいところですが、
いかんせんサイズがどちらの親にも及びません。
南西側に大きなカナメモチがかぶっているのでちょっとかわいそうですねえ。
実生4
クリーム黄色の長い花弁がV型に直立しますが、
花形や、後半になると形がくずれてしまうところもアクミナータによく似ています。
しかし、樹形は単幹で端正な円錐形、成長、花つきともに一番よい株です。
以上、実生花の評価の一端を記してみました。
結果は一長一短で、良花はそうたやすくできるものではないことがわかります。
花木の改良には土地(広さ)と時間(長さ)が必要です。
育てる側にも忍耐が欠かせません。ずっーと気長に待つのみです。
やあ、それにしてもモクレンたちも、よくがんばってくれました。
ニュースその1: バーベキュー場の管理棟の前でハンカチノキが咲き始めました。
ニュースその2 :長らく閉鎖されていた金沢市民の森への遊歩道は今月15日に解除され、
大丸山へのアクセスも再び元のように楽になりました。
それでは、新緑の金沢自然公園へ皆さま、ぜひお越しください。
お待ちしていまーす。
(担当:マグノリア)