更新日:2021.08.18畑に集まるいきもの
畑に集まるいきもの
金沢動物園では「身近ないきものを知ろう!」を実施中ですが、緊急事態宣言中ということで、園内各所の看板をご覧いただきながらセルフで生き物を探し、楽しんでいただくような仕様となっております。
看板は、実際に職員がいきものを観察した場所や観察できそうな場所に設置しているので、散策の参考にしてみてください。
さて、今年はいきもの館の展示場に小さな畑を作っています。試験的に野菜を育て、畑にどんないきものがやってくるのか観察しています。
春先、鍬(くわ)で土を耕して土づくりをしました。肥料はゾウのうんち。
トマト、ナス、キャベツ、小松菜などいろいろと植えてみました。
ちなみに、メダカなど大切ないきものを飼育している場所なので、完全に無農薬でチャレンジしています。
まずは順調に小松菜やブロッコリースプラウトなどの葉物野菜が収穫できました。これはライチョウが食べました。
出だしは順調でしたが、途中で小松菜やキャベツは葉っぱがボロボロに。
予想通りと言えばそうなのですが、残念な気持ちになります。
チョウやハバチの幼虫が観察できました。食べ放題です。
カボチャやキュウリにはウリハムシ。ネギはネキリムシ(ガの幼虫)の餌食に。
虫たちの生態も実に興味深いのですが、長くなるのでまたの機会に。
そこそこ虫に食べられましたが、野菜が全滅することはありませんでした。ムクドリなどの鳥やカエルなどが害虫を食べてくれます。
ムクドリはいきもの館であまり見かけない鳥でしたが、畑ができたことで餌を探しにやってきたようです。
様々ないきものがいて、食べたり、食べられたりしながら個体数が調整されます。まるで理科の教科書を見ているみたいです。
トウモロコシが実りはじめると・・・、すぐに食べられました。
犯行の様子がカメラに写っていました。タヌキです。
ナスやキュウリも少し食べましたが、一番気に入ったのはトウモロコシのようです。
トマトを食べていたのはカラス。センサーカメラにも興味津々。
タヌキもカラスも食べごろになったものばかり食べていきます。本来、植物(野菜)も種がしっかりできてから動物たちに食べてもらいたいわけですから、当然と言えば当然なのですが、自然の仕組みに感心します。
色んないきものが来るのは面白いけれど、作物を大切にすればするほど憎らしくなります。
飼育員が動物を憎らしく思うのだから、一般の人にとってはなおさらでしょう。
農業で生活している人たちにとっては死活問題。これは、人と野生動物の戦いだと思いました。
畑チャレンジを通して、畑のいきもののことだけでなく、食べ物を育てる大変さや、野生動物による被害、自然の面白さを改めて実感しました。野菜が今まで以上にありがたく感じるし、何をどうしたらきれいな野菜ができるのだろうと新たな興味もわきました。
そして、なにより収穫の喜び。小さいけど、ちゃんとキャベツになっている。
うれしい。
キャベツはゾウが食べました。
キュウリはインドサイが食べました。
ナスはバク、トマトはテナガザルが食べました。
うんこはまた肥料にしてくれよう。
自然の仕組みはサステナブル。
畑は野菜だけじゃなく、ブログでは書ききれないほどたくさんの収穫がありました。
畑チャレンジは今も進行中。
今はほぼバックヤードでの取り組みですが、そのうち畑も展示にしたいなぁ。そう思いました。
飼育展示係 先崎