更新日:2017.06.27「虎のしっぽ」、「猫のしっぽ」
「虎のしっぽ」、「猫のしっぽ」
今夏は、ほぼ例年通り今月7日頃に梅雨入りしたと一旦報じられました。
しかし、その後は意外にも好天が続き、ここへきてようやく本来の梅雨に入った感があります。
ちょうど梅雨入り宣言(?)の頃を境にして、春咲きの花のラッシュは一段落し、花の数も減って、園内はすっかり夏モードに変わりました。
うっとおしい梅雨空のもと、ドクダミが幅を利かせています。
しいのき山でヤマユリが咲き出しました。その開き具合は如何なものかと見に行きましたら、展望台下のテラス付近にオカトラノオを見つけました。
しいのき山展望台下のテラスのがけに生えるオカトラノオ
オカトラノオは、日本、韓国、中国など北東アジア地域に分布するサクラソウ科の多年草です。
えっ、花の色といい、形といい、これがサクラソウと同じ仲間? これはにわかには信じられません!
しかし、一つひとつの花を仔細に観察してみると、花冠は下のほうが筒になり、上のほうは5裂して、それに雄しべが5本対応しています。
なるほどー、基本的な構造はピッタリ一致します。
花穂をアップしてみました
和名は、総状花序を「虎の尾」に見立てて、かつ、日当たりのよい草はらや丘陵地に生育することからオカトラノオと名づけられました。
実は、「オカ」を冠したわけには諸説あるようですが、トラノオと名のつく植物が他にいくつもあるからだといいます。
ちょっと調べただけでも、水辺に生える同属のヌマトラノオ、海中の藻類ウミトラノオ、観葉植物リュウゼツラン科のサンセベリア(トラノオの名で売られています)などが見つかりました。
いずれも尾の形や縞々模様の類似に基づくものです。まあ、なんとまぎらわしいこと。
花は一方にかたよって付き、下のほうから順に咲き進みます。なので、全体が満開ということはありません。
だらりと弓なりに垂れ下がる姿は、清楚な純白とあいまって大変目を引きます。
古くから茶花として一輪ざしに好まれるのもうなずけます。
上側に偏って花がついています
咲き出した下のほうから終わっています。
オカトラノオは18世紀後半にイギリスに紹介されると、英語でグース・ネック(ガチョウの首)の愛称がつきました。
花穂がぐにゃりと曲がったあとで先端部分が再び上を向くことがよくあるので、このように連想されたのかもしれません。
あちらでは、日本とはちがい、園芸素材として庭園や寄せ植えによく使われるのだそうです。
だけど、やっぱりトラノオの方がなんか東洋的で、野趣に富んでいていいなあ。
オカトラノオは細長い地下茎を伸ばして、そのところどころから芽を出すので、たいていどこでも数本ずつかたまって生えるのが特徴です。
地下茎を伸ばして増えていきます。
その群生が一斉に風になびく様は本当にしなやかで優雅です。
名前から来るいかついイメージとはちがい、虎のしっぽはおろか、猫のしっぽほどの迫力も感じられないくらい優しげです。
つい、猫じゃらし(エノコログサ)を思い浮かべてしまいました。
しいのき山のカーブ付近
園内では今ヤマユリが見頃を迎えています。ぜひオカトラノオの魅力も合わせてご覧ください。ご来園をお待ちしています。
(担当:マグノリア)