更新日:2017.07.04イチゴとお互い様の精神
イチゴとお互い様の精神
じめじめと蒸し暑い日々が続いていますが、皆様お元気ですか?
さて、今回はこの季節ならではのお話を一つ。
ガウルのイチゴ(メス)と動物園の園内で暮らす野生動物のお話です。
イチゴは、その大迫力の見た目にそぐわず、とても怖がりで神経質な性格をしています。
慣れない人や物音は大の苦手で、嫌なことがあった日は抗議の意味を込めて、お部屋になかなか帰ってきてくれないこともあります。
私はイチゴの飼育担当になって3年目ですが、難儀な性格のイチゴとの付き合い方にまだまだ悩みは尽きません。
ご機嫌がいいときはこんなに近くまで寄ってきてくれるんですが...
そんなイチゴのことだから、昼間展示場にやってくるカラスやリスにもさぞかし敏感に反応するんじゃないかと思いきや、意外や意外、イチゴは小さな訪問者たちにとっても寛容なんです。
カラスは3月~7月にかけて巣作りをしてヒナを育てます。
毛のたくさん生えている展示動物は格好の巣材のようで、この時期カラスたちは展示されている動物たちの毛をむしりにやってきます。
イチゴも全身にびっしりと毛が生えていて、加えてこの巣作りの時期に換毛するので、毎年カラスがイチゴのもとにやってきます。
毛をむしられる姿は一見かわいそうに映るかもしれませんが、ちょっとじっくりこの写真をご覧ください。
このイチゴの体勢、実はかなりリラックス状態。
こんなに足を投げ出してグデっとしている姿はなかなか見ることはありません。
どうやらイチゴにとってはカラスがつつく刺激がちょうど良い気持ちよさのようで、機嫌の良い時はこのように全身リラックスして受け入れています。
飼育担当者としては、あまりにも長いことつつかれているとさすがに心配になるのですが、その点も心配はいらないようです。
しつこくつついてくるカラスに対しては、立派な角を振ってきちんと追い払っています。
このカラスマッサージ、ときにはカラスのほうが迷惑そうにしていることも...(笑)
「アゴのほうをお願いしまーす」
「はいはい、ここですね」
とでもおしゃべりしているかのようなこの光景。
動物たちの仲間には"のけもの"はいないんだな、と改めて実感させられました。
また、この時期熟した実のなるヤマモモの木にはたくさんのリスが集まってきます。
リスたちはヤマモモの実を食べるときに、葉っぱもたくさん落としていきます。
イチゴはこのヤマモモの葉が大好物。
普段は高くて届かないところにあるヤマモモの葉ですが、リスが落としてくれれば思う存分食べられます。
リスはイチゴの展示場でヤマモモの実を食べ、その下でイチゴはその葉を食べる。
持ちつ持たれつの関係です。
私もカラスやリスに負けじと頑張ってイチゴとの仲を深めています。
閉園後、イチゴが夕飯を食べたあとがイチゴと私のコミュニケーションタイムです。
女同士、何をおしゃべりしているかはここでは秘密にしておきますが...
お部屋の中でご機嫌なイチゴの表情を特別にお見せしますね。
どどーん。
どうですか?展示場にいるときとはまた違った表情に見えませんか?
これからどんどん暑くなってくると思いますが、
怖がりで神経質だけど、小さな友達と"お互い様"の関係で過ごすイチゴにぜひ会いに来てくださいね。
(くま)