更新日:2017.07.18美しいものには毒がある
美しいものには毒がある
手入れされない空き地や道路脇に、大きな葉っぱとイタドリのような太い枝に、一見ブドウを思わせる実を、たわわに付けた植物が見られる季節になりました。
今回はこのヨウシュヤマゴボウをご紹介します。
ヨウシュヤマゴボウです。小っちゃくてもけっこう立派な実をつけます。
ヨウシュヤマゴボウは北アメリカ原産のヤマゴボウ科の大型多年草で、明治時代のはじめに渡来しました。
今では野生化して、全国いたるところでごく普通に見ることができます。
根がゴボウに似ているというのでヤマゴボウ、西洋起源なのでヨウシュ、合わせて漢字で書くと「洋種山牛蒡」になります。
今、特に目立つのは、花茎の先に出る総状花序です。
柄のある、白い小さな花が茎に均等に配列し、ブラシ状に下垂しています。
花径は5ミリほど。うすいピンクがかった萼片(花弁はありません)が5枚あります。金平糖みたいにかわいい!
花のあとにできる実は扁球形の液果で、妖艶な紫黒色に熟します。
これをつぶすと赤紫色の汁が出てきます。
かつて小学校理科の教材として色水を作るのに使われたこともありました。
これをうっかり服に付けようものならなかなか取ることができません。
強力な染色力があるので、アメリカではインクベリーと呼ばれています。
茎も花の軸も柄も赤くなります。秋には紅葉もします。
ヨウシュヤマゴボウは全草有毒なことが知られています。
葉・茎にはアルカロイドやサポニン、根には硝酸カリが含まれていて、食べると中毒を起こします。
ヤマゴボウの根は漢方の「商陸」という生薬になり、ヨウシュヤマゴボウの根にもある種の薬効があって、これらは使い方によっては毒にも薬にもなります。
これはトリカブト、ハシリドコロ、スズランなどの毒草に共通する特性で、まあ、植物界の「ジキル博士とハイド氏」とでも言えるかも知れません。
大きいものでは人の背丈ほどにもなります。
ヨウシュヤマゴボウの中毒事故が起こるのには、見た目の美しさに食欲を刺激されること(たとえばブルーベリーと間違えるとか)以外に、道の駅やスーパーで、ヤマゴボウなる山菜が売られていることによる混同、があげられると思います。
私達がふだん口にしているゴボウは、キク科のアザミの仲間で全くの別物!!!
山菜のヤマゴボウも同科のモリアザミの根を味噌漬けにしたもので、要は商品名なのです。
それの親戚みたいな感じの名前がついているのが、誤解を生む元なのですね。
しかし、アメリカ先住民は、春、赤味を帯びる前の若葉をよく湯がいて、あく抜きしてから食べていたそうです。
生活の知恵というものですね。
その名残りでもあるのか、近代になると、缶詰に加工して売られたり、ワインや菓子の着色料にも使われました。
すごく多産で、秋10月にはみんな紫黒色に熟します。織物の染料にもなります。
以上、ご紹介したように、功罪相半ばとは言え、やはりヨウシュヤマゴボウは避けて通ったほうが無難です。
特に、小さなお子さんが口にすることのないように注意しましょう。
(担当:マグノリア)