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ツリガネニンジンの秋の写真

更新日:2018.08.30ツリガネニンジンの秋

更新日:2018.08.30

ツリガネニンジンの秋

よく「暑さ寒さも彼岸まで」と言われるように、あれだけ続いた酷暑もようやく下火になって、朝晩はほっとする時間も出てきました。

しかし、それもまだら模様で、まだまだすっきりした秋とは言えません。

それより、日没が早まったことと言ったら! いよいよつるべ落としの九月です。

今回はツリガネニンジンの実生と初開花についてお話したいと思います。

これは、おととしの十月になんだろ坂で見つけた、一本のツリガネニンジンから実を採り、去年春にタネを蒔いたものです。

ha20180826写真1.jpg なんだろ坂で見つけたツリガネニンジン

ツリガネニンジンはキキョウ科ツリガネニンジン属の多年草で、かつては金沢自然公園でふつうに見られたそうですが、

今では滅多に見ることもできなくなってしまいました。

ha20180826写真2.jpgきれいな釣り鐘。打ち鳴らす棒(花柱)も突き出ています

その名の通り、地際に顔を出した根茎は白いニンジンそっくりです。

一年目の実生苗(みしょうなえ:種から育てた苗のこと)は根が浅いので、霜が降りる冬には凍て上がって、地上部に放り出されることもしばしばでしたが、こんなことで枯れたりはしません。

これを植え戻してやればちゃんと生きていて、成長するにつれて地中にもぐっていきます。

ha20180826写真3.jpgニンジンによく似た根茎

しかし本来、名前の由来は、この太くゴツゴツした根茎が、薬効は代用できないとはいえ、強精剤のコウライニンジンに似ているからなんだそうです。(私は実物を見たことがありません。)

ちなみに、干した根茎を煎じたものは中国で沙参(しゃじん)と呼ばれ、咳止め薬になります。

安価な薬品の大量生産が発達した今では、あえて使われることもないようです。

根生葉(こんせいよう:地上茎の基部についた葉のこと)は長い葉柄を持ち、丸っこい心形か楕円形でふちに鋸歯があります。

ha20180826写真4.jpg最初は長い柄がついた葉っぱだけで茎はありません

ところが、成長して翌年茎が立ち上がると、茎につく葉っぱにはほとんど柄がありません。

形は線形か披針形、しかも互生だったり対生だったりします。

一本の草に、似ても似つかぬ葉をいろいろとつけるのがこの草の特徴です。

葉っぱの変異が大きいことを知らない時は、「あれぇ、たしかにツリガネニンジンを植えたのになあ」と不思議に思ったほどでした。

(根生葉は花が咲く頃には枯れてしまいます。)

ha20180826写真5.jpg蕾ができてきました。花冠に線形の萼片(がくへん)が張り付いています 

 

ツリガネニンジンは7月下旬から急速に花茎が伸びてきて、夏も盛りを過ぎる頃、きれいに輪生した枝の先に淡紫色の花を鈴なりにつけます。

端正な釣り鐘状の花を数段にわたってつけるさまは本当に涼やかで見飽きることがありません。

山草の愛好家の間で人気が高いのも、うなずけようというものです。

ha20180826写真6.jpgバックヤードの一番花! 8月26日 これから沢山咲きます 

ののはな館に立ち寄られる人達の話によれば、氷取沢の山中ではお盆休みにもうかなり咲き進んだツリガネニンジンを見たとのことです。

通常、早いもので8月、遅いものになると11月に入っても咲いているそうですから、けっこう開花期間が長い植物なのですね。

いずれにしても今後、これらを徐々に公園内に戻してかつてのように再生を促したいなと考えています。

ところで、ののはな館の前庭では、今オミナエシにオトコエシが追いついて(特におもしろ自然林側の斜面)、

しばらくの間両者の花を同時に見ることができます。

同じ仲間ながら、一方はしなやかで女性的なやさしさ、片方は剛直で男性的な雄々しさを持った、初秋の里山を代表する野草です。

その競演をぜひご覧ください。

ha20180826写真7.jpgオミナエシ

ha20180826写真8.jpgオトコエシ

 お待ちしています。

(担当:マグノリア)