更新日:2024.09.03園長ブログ第一回 ~動物園の日常 Part I~
園長ブログ第一回 ~動物園の日常 Part I~
職員からの要望があり、今回から動物園ブログに参加することになりました。
時には堅苦しく、時には柔らかく、気の向くままに、そして徒然なるままに書きつづりたいと思います。ですから、定期的には掲載しませんし、どれくらい続けられるかもわかりません。
まずは動物園での一日についてお話ししましょう。
現在、ズーラシアには午前6時前に出勤し、宿直の警備員を除けば、誰よりも早い到着です。早出の習慣は、1978年から2001年まで神戸市立王子動物園の頃からあまり変わりません。早く出勤することに確固とした理由があるわけではありません。ただ、王子動物園時代もそうでしたが、動物の大切ないのちを預かり動物園を守っているという意識をもつ職員が多い職場で、一番の出勤を果たすと、なんとなく誇らしさを感じさせます。単なる負けん気かもしれませんが。
午前6時前に動物園に着くには、自宅を午前4時30分に出る必要がありますから、午前4時前には起きなければなりません。夏場の今なら何とか可能ですが、冬になるとかなり厳しいです。昔は、星空の中を出勤し、星空の中を帰宅するという日常でした。たまの休日に娘と遊ぶと、その後で「お父さん、また来てね」と言われたこともありました。
さて、早朝に出勤して何をしているかというと、園長室で二度寝しているわけではありません。
作業服に着替え、雨具のズボンだけをはき、長靴を履いて園内の巡視に向かいます。記録用のカメラとスマホも持参し、猛暑の時期には電解質飲料を入れた再利用のペットボトルと塩タブレットも欠かせません。
最初に向かうのは、園内の自然体験林です。ズーラシアの敷地は広いため、この場所を巡回しておかないと、一日では園全体を回り切れなくなります。そういえば、夏場の自然体験林は蚊やメマトイが多いので、防虫用のヘッドネットを準備することもあります。最近は虫除けのオニヤンマフィギュアを帽子に付けアームカバーで腕を守っています。前者は、警備の方からプレゼントしてもらい、後者は台北市立動物園の知り合いからプレゼントしてもらったものです。細くてか弱そうで頼りなさそうな様子を感じさせるからなのか、多くの皆さんから心配され温かな心遣いもいただいています。この場をおかりしてお礼いたします。
巡回の途中における野生生物との出会いも園内巡回の楽しみのひとつ。
【コゲラ】
【イチモンジセセリ】
【シュレーゲルアオガエル】
ところで、なぜ園内を回り切る必要があるのか疑問に思われるかもしれません。
もちろん、動物たちや施設の現状を把握することは管理者としての責任ですが、自分に課した責務が大きいかもしれません。この責務の由来は、上野動物園で長年園長を務められた古賀忠道さんの動物園における日常です。王子動物園で働き始めたころ、古賀さんが毎朝動物園内を一巡して動物の様子を観察し、飼育係と会話しているという話を聞きました。動物の呼吸数までカウントし、健康状態が悪いと判断した場合には(古賀さんは獣医師でもありました)、飼育係に処置の必要性を伝えていたそうです。
それを知ってから、飼育作業や獣医療の仕事が忙しくても、できるだけ毎日園内を一周するように心掛けるようになりました。時間的にはかなり厳しいため、朝早くに出勤するのが必須です。古賀さんも大変だったろうなと当時同情していたのですが、後から彼が園内にある公舎に住んでいたことを知り、少し気が抜けたのを覚えています。
尊敬する動物園人である古賀さんに関する話は他にもありますが、今回はこのぐらいで...。
園長 村田浩一