金沢動物園公式サイト

twitter facebook youtube
カンガルーブログ カンガルーとサーモグラフィー 前編の写真

更新日:2024.07.29カンガルーブログ カンガルーとサーモグラフィー 前編

更新日:2024.07.29

カンガルーブログ カンガルーとサーモグラフィー 前編

今回は文字多めのため、前後編に渡ってお送りします。

すっかり夏日になり、人も動物も日陰で過ごす日々です。毎年夏のカンガルーの行動として、『腕舐め』を紹介しています。汗腺があまり発達していないカンガルーが、腕や脚を舐めて濡らし、その唾液が乾く際の気化熱を利用して体温を下げるという仕組みです。体温を下げられると言っても、目に見えるものではないので、あまり想像がつかないかもしれません。

腕舐め.jpg

そこで!サーモグラフィー(以下サーモ)カメラを使って、カンガルー展示場でいろいろ撮影してみました。このカメラは、赤外線を利用して対象の表面温度を測定することができます。

動物園では、主に直接触ることが出来ない動物に対して、どうやら後肢を痛めて腫れている気がする...といった場合に、炎症(熱)が起きているかを見つけるために使ったりします。もちろん日が当たれば表面温度はすぐ変わり、これだけでは診断は出来ないので、参考のひとつとしています。カンガルーは直接触って確認ができるので、これまでちょっと縁遠い存在でした。

 

まずは、最近ウォークスルーの出口付近の木陰にいることが多いオス。

ウォークスルーから見えるオス.jpg

木陰のオス2.jpg

他にも木陰はありますが、午前中はこの辺りにいることが多いです。

早速、撮影していきます。ちなみに、サーモはあくまでも表面温度を測定しており体温とは違うので、その点ご承知おきください。※右端の目盛りは、見やすくする為に私の方で追記したものです。

オスの腕.png

カンガルーの体温は36度前後という報告がありました。舐めて濡れた部分(口周り・腕の内側・脚の一部)は、乾いた部分比べ表面温度が下がっているのが分かります。また、日陰の地表は約32度で、カンガルーが木陰に横になって涼を取っているのも納得です。

 

カンガルー通の方は、舐めるだけではなく水に入って体を濡らすカンガルーがいることは、ご存知かと思います。個体にもよりますが、カンガルー は体を濡らすことをあまり嫌がりません。また、地面を掘り、出てきた湿った土の上に横になって休むこともあります。そこで、今の時期は、カンガルーを展示場へ出す前に、影が多い場所に水を撒き湿らせておきます。

午前中メスが多い場所1.jpg

濡れた地面で寝た体はしっとり濡れて...

日陰のメス1.png

日陰のメス2.png

やはり表面温度が下がっています。

打ち水効果も狙っていますが、カンガルーの体が濡れることも狙いの一つ。こちらの意図を汲んでいるのかいないのか?濡らした地面でくつろいでくれると一安心です。

 

後編に続く

(しばた)