更新日:2017.12.16赤い実と縁起
赤い実と縁起
師走もあと十日ほどを残すのみとなり、朝晩の冷え込みはいよいよ本格化してきました。もう自然公園内の花もめっきり少なくなっています。今週は、そんな中にあって初冬のさびしい景色を彩ってくれる木の実、それも赤い実を探して歩いてみました。
〽 あーかいとりことり
なぜなぜあかい
あーかいみをたべた
(成田為三作曲、北原白秋作詞、大正7年)
昔なつかしい童謡「赤い鳥小鳥」の一節です。
赤い実はたいてい多肉果か液果で、遠目にもたいへん目立ちます。
これは、タネをできるだけ遠くまで野鳥に運んでもらおうという、植物の繁殖戦略のひとつと考えられています。
トキワサンザシ 今一番アピールしている実です。
ピラカンサと言ったほうがわかりやすいかもしれませんね。
ヨーロッパ南部から西アジア原産のバラ科の常緑低木です。もう見るからに多産・豊穣そのものです。
まだ野鳥の食糧もひっ迫していないのでこうしてたわわに残っていますが、これも2月までの命、厳寒期にはきれいさっぱり食べられてしまいます。
サネカズラ 和菓子の鹿の子みたいでおいしそうです。
サネカズラはマツブサ科のつる性常緑樹で、関東より西の地方から中国大陸にかけて分布しています。
ご覧のようにたくさんの果実がひとかたまりの球状になって、枝からぶらさがるようについています。
雌雄異株なので、これは雌木ということになります。
昔、つるから取れる粘液を武士がちょんまげの整髪料として使ったことからビナンカズラ(美男葛)とも呼ばれます。
クロガネモチ これも雌雄異株で縁起木のひとつです。
クロガネモチはモチノキ科の常緑高木で、よく公園や街路に植えられます。
クロガネとは(黒)鉄のことで、若枝や葉柄が黒紫色になるためにこう名付けられました。
「苦労なく金持ち」になれるというこじつけから、いわゆる縁起木としてお庭に植える方もいるようです。
センリョウ 一声千両、目元千両などと同じで、めでたい美称です。
センリョウはセンリョウ科の常緑小低木で、赤く熟した丸い実は実に値千金!としてこの名がつけられました。
おもしろいことにヤブコウジ科にはマンリョウ(万両)があります。
同じくヤブコウジ科のカラタチバナは百両、ヤブコウジそのものは十両、そしてアカネ科のアリドオシは一両と通称されます。
これは、背の高さ、実のつき方・多さなどから縁起木の役者ぶりを比喩的に評価したものです。
江戸時代の人々の粋がうかがえて面白いですね。
ナンテン 端正な葉と美しい実の取り合わせは冬の庭を明るくしてくれます。
ナンテンはメギ科の常緑低木で、野山に普通に見られますが、古い時代に中国から入ってきたという説が有力です。
お正月の縁起物の代表格は松竹梅ですが、ナンテンも「難を転じる」の意味合いから、この時期、重要な花材です。
それにさらに福寿草を添えて飾られることもあります。これで「難を転じて福となす」と言いなすそうです。
うわぁっ、もうひとつ、吉祥草も見つけました。吉です、吉! キチジョウソウは丈が低く、地際に実をつけるので、目を凝らさないとなかなか見つけられません。
キチジョウソウ ユリ科の常緑多年草です。
赤はもともと縁起がいい色ですが、これだけ見つかるとなんだかいいことが起こりそうな気がしてきました。
誰しもハッピーな年末年始にしたいですものね。
散策、ハイキングにぜひお出かけください。一時せわしさを忘れてゆったりとすごせますよ。お待ちしています。
(担当:マグノリア)