更新日:2021.02.14カシノナガキクイムシ
カシノナガキクイムシ
なんだか呪文のようなタイトルですが、
みなさんこんにちは。
本日のテーマは、「カシノナガキクイムシ」です。
漢字で書くと、樫の長木食い虫。
樫の木につく体の細長い木を食べる虫という意味です。
じつはいま、このカシノナガキクイムシのせいで、
公園の木が次々と伐採されています。
カシノナガキクイムシは、5mmくらいの小さな黒っぽい虫で、
幼虫はカビ(菌類)を食べて育ちます。
幼虫のエサになるカビ(菌類)は、カシノナガキクイムシの成虫のメスの背中のくぼみに共生しています。
カシノナガキクイムシは、産卵のため木に穴を開けてトンネルを作りますが、
このときカビ(菌類)がトンネルの壁面に植えつけられます。
カビ(菌類)はトンネルの中で増殖して、卵から孵化した幼虫のエサになるのです。
カシノナガキクイムシは、だいたい6月ごろから、
こうしてカビ(菌類)を伝播するのですが、
オスは大量のメスを呼ぶので、
大量のカビ(菌類)を植えつけられた樹木は、
衰弱して枯れてしまうのです。
↓コナラの幹にカシノナガキクイムシが開けた穴(赤丸部分)
↓根本にたまったフラス(木くず)
これがナラ枯れと呼ばれる現象で、
20年くらい前は関西圏で被害が多かったのですが、
どんどん北上していて、いまでは横浜の公園の木も次々と枯れています。
横浜市児童遊園地では、コナラ・クヌギ・マテバシイが被害にあっています。
↓マテバシイの被害木
カシノナガキクイムシは外国からきたの?と質問されることがありますが、
もともと日本にいた昆虫のようです。
ではなぜ急に被害が増えたのでしょうか。
じつは、カシノナガキクイムシが穴を開けたすべての木が枯れているわけではありません。
若い木は、樹液を大量にだして枯れるのを防いでいるそうです。
児童遊園地でも大径木(だいけいぼく:太い木)は、
枯れている木が多いのですが、細い木はあまり被害にあっていません。
その昔、クヌギやコナラの雑木林は、薪炭林(しんたんりん)と呼ばれ、
燃料や肥料に使うため20~30年くらいで伐採されていました。
高度成長期になると、燃料は石油、肥料は化成肥料が使われるようになり、
薪や炭を使うことは少なくなりました。
伐採をされなくなった雑木林は大径木が多くなっていったのです。
もともとカシノナガキクイムシは、山の若返りをはかる役目だったのかもしれません。
現在、都市部の雑木林は、主に公園でみかけるようになりました。
公園では樹木の伐採をすることは少ないので、
カシノナガキクイムシが爆発的に増えたのかもしれません。
カシノナガキクイムシを退治することはできないのか?という質問をいただくことがあります。
カシノナガキクイムシは直接樹木を食害しているわけではないので、
薬剤は効きにくく、カビ(菌類)を持ち込ませない、つまり予防が一番の対策です。
そして、罹患してしまった場合は、
対象木の焼却処分=伐採がいまのところ一番効率のよい方法です。
次々に枯れていく樹木をみるのは、悲しい気持ちになりますが、
自然環境は常にバランスをとっているのだなあと、不思議な気持ちにもなります。
さて、みなさんは、どんなふうに感じますか?