更新日:2025.01.19庭園散歩【2025年1月19日】
庭園散歩【2025年1月19日】
本日、10時から庭園散歩を開催しました。
講師は、元横浜市こども植物園 園長 六浦勉さんです。
今回のテーマは、種子の戦略、早春の花です。
▼資料
まずは、草本類と木本類の解説から始まります。
木本類は花が咲いても枯れず、寿命まで成長します。
草本類の寿命は一年草や二年草のように約一年以内に開花・結実して枯死するものと、開花結実しても根が冬越しをして翌春に芽を出す宿根草に分類されます。
また、竹の仲間モウソウチクの寿命は200年と言われています。中国から200年以上前に株分けで日本に移入しました。通常は花が咲くと枯れてしまいますが、横浜で部分開花した株が結実し、結実した株は枯死しましたが咲かなかった株は現在も生育しています。結実した種から育ったモウソウチクは、現在緑区や大磯、京都などで管理されています。
種子の寿命は、千葉県の遺跡から出土した大賀蓮(オオガハス)が長寿として有名で、約2000年を経て発芽しました。現在は各地の植物園などで見られます。
▼フッキソウ(ツゲ科)~休憩棟前~
常緑小低木。常緑でよく繁ることから富貴草と呼ばれます。庭園ではフッキソウの開花が始まりました。
▼カンツバキ(ツバキ科)~もみじ坂~
常緑樹。横に伸びて広がりやすい「這寒椿」、上に成長し高木になる「立寒椿」が園内に植栽されています。アメリカでは交配が進み、花径が大きい品種が作出されています。
▼バショウ(バショウ科)~もみじ坂~
草本類の宿根草。冬になると地上部は枯死し、春に新芽が出てきて生長します。バナナのように見える果実は、種が多く味も渋いため食用にはなりません。一般的に食用になるバナナは3倍体で種子ができないのに対し、バショウは2倍体の為、結実します。
▼イヌツゲ(もちのき科)~もみじ坂~
常緑小高木。名前にツゲが入っていますが、モチノキの仲間です。ちなみにイヌは「否」という意味。動物のイヌに名前が由来する植物は、「エノコログサ(イヌコログサ)」や「イヌノフグリ」の仲間などがあります。
ここでタネの戦略について
タネの拡散は、植物が生き残るために進化してきた最終形態です。より多くの子孫を効率よく殖やすために、それぞれの植物は様々な戦略を持っています。
・親木の近くで発芽するもの
大型で重い果実や種子へと進化した植物。落下して発芽します。(ドングリ、クルミなど)
・重量が軽く、羽根や毛などがあるもの
タネは風に乗って遠くまで運ばれるため、広い範囲で発芽します。(カエデ類、キク科、キンポウゲ科、イネ科など)
・鳥などの動物に食べられるもの
完熟した果実は甘くおいしくなり、食べごろのサインを出します。これらの果実には種子の周りに発芽抑制物質があり、動物の体内で消化されて糞として排出されることで発芽抑制物質は除去され、発芽することが出来ます。(果実をつける植物)
・海や川に流され広がるもの
海岸や沢に自生する植物(ヤシ、クルミなど)
・動物の体にくっつき運んでもらうもの
ひっつきむしと呼ばれる植物で、タネに鍵針のようなものを持ち、動物の移動範囲で広がります。
(オナモミ、センダングサ、ヌスビトハギなど)
▼アザミの仲間(キク科)~もみじ坂~
宿根草。綿毛がある種子は風に飛ばされ拡散されます。
▼ヤブラン(キジカクシ科)~山野草の小径~
多年草。山野で樹木の下草として自生します。
▼どんぐりの仲間~果樹園横~
落下による繁殖だけではなく、ネズミやリスの動物のえさとなり、運ばれて発芽します。
▼ソシンロウバイ(ロウバイ科)~憩いの小庭~
落葉高木。中国原産で花が少ない冬の時期に咲きます。花全体がつやのある黄色で甘い香りが漂います。
▼スノードロップ(ヒガンバナ科)~憩いの小庭~
球根植物。冬から春先に咲き、春を告げる花として知られています。
▼スノーフレーク(ヒガンバナ科)~憩いの小庭~
球根植物。スノードロップと同じ時期に咲き、花の色や咲き方、葉の形状も似ていることから間違われやすい植物ですが、花は小ぶりでスズランに似た形をしています。
▼ニホンズイセン(ヒガンバナ科)~四季の花苑ほか~
球根植物。房咲きスイセンの仲間です。地中海原産で中国を経由して日本に伝来されました。甘い香りが園路に広がります。
ツバキの仲間「侘助」(ツバキ科)~四季の花苑ほか~
ツバキより小ぶりの一重咲き。半ばまでしか開花しないのが特徴です。茶花として使われます。
▼侘助(園芸品種)
白花品種
赤花品種
朝から凍てつく寒さの中スタートしましたが、昼近くなっても気温が上がらず、とても寒い園内で観察会が行われました。ご参加頂いたみなさま、寒い中ありがとうございました。
2月の庭園散歩は2月16日(日)10時から。テーマは「早春に咲く植物」です。
申込受付は2月8日(土)9時半から、お電話または来館でお申込みいただけます。お誘いあわせの上ご参加ください。