更新日:2016.01.26ツバキのあれこれ
ツバキのあれこれ
花の少ない冬枯れの季節に咲くことから、ツバキは古くから
私たち日本人にとって最も親しみやすい花木のひとつです。
ツバキの典型
名前の由来には、「厚葉木(アツバキ)」のアが省略されたのだろう(貝原益軒説)とか、
いや、「艶葉木(ツヤバキ)」のヤが抜けたのにちがいない(新井白石説)など、いくつかあります。
ツバキは、「古事記」、「万葉集」の時代には霊力が宿る神聖な樹と考えられましたが、
一方では薪炭、調度品の材料として重宝され、灰は紫色の媒染剤になり、
実からは油が採れるなど、日本人の生活や文化と深い関わりがありました。
それは、よく絵画、美術工芸品の意匠デザインに用いられることからもわかりますね。
また、ツバキは樹勢が強く、花色、花形も豊富で育てやすく、
繁殖も容易なので庭木として愛でられ、江戸時代以降にたくさんの品種が生まれました。
カンツバキ ツバキとサザンカの交雑種と考えられています。
ところで、よく来園者の方から「ツバキ」と「サザンカ」はどう違うのと、
質問されることがあります。
両者は同じツバキの仲間ですが、
一般的にツバキの花は平開せず、雄しべが筒状に合着していて花ごと散る。
サザンカは平開し、花弁の間に隙間があって、花弁と雄しべがばらばらに落ちる。
これが一番簡単な見分け方です。
花期もサザンカは仲秋から初冬にかけて咲き始めますが、
ツバキは一足遅れて1月から4月にかけて咲きます。
ツバキは独特の散り方をします
中世、ツバキの花は首ごと落ちるということから、出陣や祝言の席ではうとまれ、
特に武家の家紋とすることは避けられてきました。
他方、安産の神様とされる水天宮の神紋はツバキですが、
このポトリと落ちる性質が、むしろ好ましく思われたなどという俗説もあります。
そう言われてみると、厚いつやつやとした葉と真っ赤な花のコンビからは
妖気のようなパワーを感じますね。
肥後ツバキ系 一重、平開、梅芯咲きが特徴 雄しべを観賞する珍しい植物です.
ツバキは18世紀にヨーロッパに紹介されるや、一大ブームを引き起こし、
上流階級の間でさかんにもてはやされました。
東洋の植物への憧憬が原動力になったようで、新品種の作出も意欲的に行われました。
そうして、アレクサンドル・デュマの小説「椿姫」(1848年)が
ツバキを不朽のものにしたとも言われています。
大小の縦絞りが入るタイプ
こうして、特に欧米で作り出された園芸品種は、学名のまま「カメリア」と総称されて、
近年、日本に逆輸入されるようになりました。
なんだかユリのケースに似ていますね。
概して、花は大きな八重花が多く、花色も鮮明、直截的で押し出しが強い傾向があります。
それに対して、日本ツバキは侘び、寂びからきた気品、幽玄に美の本質をおいているため、
奥ゆかしく控え目です。
これは、その国の文化や感性、人の美意識のちがいによるのものです。
どちらがいいとか悪いとかではなく、どちらも楽しみたいという方がほとんどでしょうね。
金沢自然公園に来られた際には、ぜひそういうところもごらんになってください。
「寒」も半ばを過ぎて、もうじき立春です。
お天気のよい日にはお散歩、ハイキングにお出かけください。お待ちしています。
(担当:マグノリア)