更新日:2024.12.21ぼたん ありがとう
ぼたん ありがとう
2024年12月13日、コアラのぼたんが天国へ旅立ちました。12日の午後から床に降り、13日の朝、うつ伏せた状態になっていました。身体を起こすと、わずかに口が動いた気がしました。よく見るとかすかに呼吸をしていたため、急いで着ていたフリースをかけ、手でぼたんの手足を温めながら獣医を呼びました。聴診器で確認すると、心臓は弱いながらもちゃんと動いていました。
獣医と交代でぼたんの様子を見ながら、ぼたんの横に座り左手を握っていると、ぼたんはギュッと強めに握り、大きめにフーっと息を吐きました。まだこんなに力があるんだと少しほっとしました。朝冷たかった手はだいぶ温かくなっていたので、わずかに調子が戻ったのかと思っていました。でも、その後ぼたんが手を握ってくることも息をすることもありませんでした。獣医を呼び確認してもらいましたが、ぼたんの心臓はもう動いていませんでした。お昼まで、ぼたんはがんばりました。
ぼたんは、2019年3月27日に神戸の王子動物園から来園しました。まだ2歳になる前のあどけない顔の活発なコアラでした。
いつも本当においしそうにユーカリを食べるので、ユーカリ交換の時間が私の楽しみでした。
ぼたんは、よく足を投げ出して止まり木に座っていました。このポーズもかわいくて大好きでした。
たんぽぽが生まれてからは、表情が母になり、本当に大切な宝物のように育てていました。人の気配がするとすぐにたんぽぽを袋にしまっていたため、出袋してすぐは、なかなか姿を見ることができませんでした。
たんぽぽが、パップ(離乳食)を食べている間は1時間以上じっと動かず待ってあげていました。
いつもたんぽぽを守ろうと必死で、体重測定をするときも、心配で見にきたり、時にはパーテーションをバンバンたたくこともありました。
大きくなったたんぽぽをおんぶして一生懸命歩く姿が辛そうでしたが、1歳3か月までがんばって乗せていました。
ひなぎくの子育ては、だいぶリラックスしていました。出袋してすぐから足の上に乗せていたり、パップを食べさせながら自分もユーカリを食べていたり、体重測定でひなぎくを放しても全く動じることはありませんでした。
たんぽぽがひなぎくの面倒をみてくれることもあったので、子育て中でも表情がとても穏やかでした。
ぼたんのお気に入りのVの形の止まり木は、こどもたちもマネをして、みんな同じポーズで休んでいました。こどもが来ると自分が休んでいても場所を譲ってあげるやさしいお母さんでした。
コアラ舎の工事があるため、別の獣舎にコアラ全頭で引っ越しをし、ぼたんの体調を考慮して、たんぽぽとひなぎくとは別の部屋にいたのですが、ぼたんが思ったよりユーカリの採食も動きもよかったため、日中はこどもたちの部屋を行き来できるようにしていました。始めはみんな寝ていたり、気づいていませんでしたが、死亡する3日前、ぼたんが床をスタスタ歩いて、こどもたちの部屋に行きました。たんぽぽもひなぎくもぼたんに気づき、しばし母と娘の時間を過ごしました。
翌日も間仕切りを開けると、ひなぎくは、ちょうど部屋と部屋の間に座りました。ぼたんのところへ行くわけではなく、ぼたんから見える場所にただ座っていたのですが、間仕切りが閉まらないようにそこに座っているようにも見えました。
たんぽぽは、今、子育てをしています。ぼたんがたんぽぽにしていたように、なかなかこどもの姿をみせなかったり、パップを食べさせている間、じっと動かなかったり、やっぱり宝物のように大切にしています。ひなぎくもたんぽぽと一緒に暮らしながら、子育ての様子を見たり、手伝ったり(するかな?)しながら、いつかぼたんのようなやさしいお母さんになってくれたらと願っています。
ぼたん たんぽぽとひなぎくを立派に育ててくれてありがとう。ぼたんがつないでくれた命のバトンがこれから先もずっとずっと続くように頑張るから、天国からみんなを見守っていてください。ぼたんが金沢動物園に来てくれて、出会うことができて本当によかった。(コアラ担当 かそ)
*献花台につきましては、野生動物等による衛生上の観点から、設置をとりやめさせていただいております。ご理解の程、何卒よろしくお願いいたします。これまでぼたんを大切に思っていただき、本当にありがとうございました。