更新日:2024.05.20愛鳥週間!カモメ類の暮らす環境のこと
愛鳥週間!カモメ類の暮らす環境のこと
愛鳥週間はあっという間に終わってしまいましたが...。引き続き、カモメ類の環境についてお伝えします。
(前回のブログ:愛鳥週間!オオワシの暮らす環境のこと)
★ウミネコ
ウミネコは1年中日本で見ることのできるカモメの仲間です。夏は日本周辺の島などで繁殖をします。ウミネコの集団繁殖地として有名なのが青森県にある「蕪島」です。国の天然記念物にも指定されています。近年では東京のビルの屋上などでも繁殖が確認されており話題になっていますね。冬も日本周辺で生活をしていますが、寒さの厳しい北海道や東北にいた個体は南下してきます。
〈野生のウミネコ(右側)左側にいるのはユリカモメです〉
★キアシセグロカモメ
日本では冬にやってくる冬鳥になります。とはいえ、飛来数は少ないので野生で見るのは難しいかもしれません。おまけに冬は、セグロカモメ、シロカモメ、ワシカモメなどなど...。たくさんの種類が日本にやってくるので、識別も難しいです。夏は、モンゴルやバイカル湖周辺で繁殖をしています。
〈様々な種類のカモメたちがたくさん日本にやってきます〉
さて、カモメ類を含む海鳥が直面している大きな問題の一つは、海洋ごみ問題になります。
海洋ごみ問題は、海に暮らす生き物に様々な影響を与えます。
海ごみが体に絡んで身動きが取れず死亡してしまう、ごみを誤飲することによる窒息死、またおなかが満たされたと勘違いしてしまうことによる餓死などがあります。
そして海洋ごみのうち約80%が、プラスチック製品によるものです。
当園で飼育しているウミネコの中には、野生で保護され治療したのち、野生に帰すことができないと判断したためそのまま飼育されている個体もいます。
〈2023年にズーラシアにやってきた保護ウミネコ〉
今回紹介したいのは、野生で保護されそのままズーラシアで飼育されているウミネコです。
右足に橙色の色環を付けているので、「右橙さん」と私は呼んでいます。
※右足に橙色の色環を付けているウミネコは実は2羽いますが、今回の個体は左翼が下垂していることで識別できます。
〈ウミネコ保護個体の右橙さん〉
右橙さんは、口角から左翼にかけて釣り針が引っ掛かっていて身動きが取れなくなっていたところを保護されました。釣り針を外せたものの、左翼は傷ついてしまったため野生に戻すことは難しいと判断し、ズーラシアでそのまま飼育されることになりました。
人が海に捨てていった釣り針によって、右橙さんは野生へ戻ることも、飛翔することすらもできなくなってしまいました。
でも、ズーラシアのほかのウミネコたちに囲まれながらたくましく暮らしています。
水を飲んだり、餌のアジをほかの個体に負けじと食べにきたりと一生懸命生きています。
〈水を飲むウミネコ右橙さん〉
〈負けじとアジを食べにくるウミネコ右橙さん〉
右橙さんは釣り針によって被害を受けましたが、それ以外の海洋ごみによって苦しめられている生き物はたくさんいます。
ゴミをポイ捨てせずにきちんと捨てるのは当たり前のことですが、それ以外にもプラスチックごみを減らすためにマイボトルやエコバッグを使うなど、私たち人間が海に暮らす生き物たちのためにできることはたくさんあります。
ぜひ愛鳥週間を通して、鳥たちの暮らす環境のこと、そして何ができるかを考えてもらえたらうれしいです。
飼育展示係 田中