更新日:2015.07.28『しだの谷のウバユリ』
『しだの谷のウバユリ』
梅雨が明け、本格的な暑さの訪れとともに、しだの谷でウバユリが咲き始めました。
ウバユリはこのあたり一帯にもともと自生していたもので、近年次第に数が増えてきました。
ウバユリのつぼみは立ち上がる時は見事に垂直ですが、咲き始めると横向きになり、
ちょっと黄緑がかった細長いラッパのような形の花を開きます。
平開することはありません。
つい、このあいだまで咲いていた里山の女王、ヤマユリとはずいぶん雰囲気がちがいます。
ウバユリは、数ある日本固有のユリの中でも特異な存在です。
単子葉植物のユリの葉は一般的に細長く、並行脈ですが、
ウバユリはまるっこい心臓形で葉柄があり、おまけに網状脈ときています。
春に見られる根出葉からは、これがユリのような花を咲かせるとはとても思えません。
おもしろいことに、花が咲く頃になると葉が黄色っぽく変わって、やがて黒くとろけたように枯れてしまいます。
春先の若葉の頃は艶がある照り葉だったのに...。
花が咲く頃に葉がない姿を昔の人が、「歯(葉)がない姥=老女」にたとえてウバユリと名付けたというのが、
世間一般の通説のようです。
洒落とはいえ、ちょっと気の毒な感じがしますね。
しかし、歯が無いのに、なお色気を残していると好意的に解釈する方もいらっしゃるそうです。
実際には、歯、ではない、葉をしっかりつけたまま咲いている個体もあります。全部が全部葉を落とすわけではないのですね。
ウバユリに遭遇した時はぜひこの点を観察してみてください。
ウバユリは一度花が咲くと枯れてしまう性質があります。
そのかわり、死にゆく鱗茎の周囲に子どもの鱗茎を生じ、この方法で子孫を殖やすこともできます。
タネからでは5年から7年もの歳月を要するので、ちゃんと生き残るための戦略を用意しているのですね。
一見地味なウバユリがこんな生活史を持っているなんて、すごーい!
( 担当:マグノリア)