更新日:2015.09.15「ヒガンバナの不思議」
「ヒガンバナの不思議」
秋のお彼岸が近づくと、間違いなく咲く花と言えば『ヒガンバナ』です。
地面から目立たぬようスーッと花茎を出したかと思うと、一斉に赤く燃えるような花を開きます。
その色といい、形といい、華やかさと妖気を合わせ持った、きわめて個性的な花です。
↓花茎が顔を出しました。これではうっかり踏んづけてしまいそうですが...。
グングン伸びます。すごいスピード!!
そして、ある日、一斉に朱赤のかがり火が上がります。 お見事!
花が枯れると濃緑色で線形の葉を出し、そのまま冬を越しますが、
春にはこれも枯れてしまいます。
その後、秋の開花までは休眠するので地上部には何も見られません。
実におもしろいライフサイクルです。
ヒガンバナは中国揚子江沿岸が原産の帰化植物です。
しかし、いつ頃、どのような経緯で我が国に入ってきたのかは諸説あり、よくわかっていません。
しかも、不思議なことに、我が国のヒガンバナはすべて3倍体なので実で殖えることはありません。
最初のたったひとつの不稔(ふねん)の個体から分球(ぶんきゅう)をくりかえすことで
殖えてきたとしか考えようがないのです。
このことを初めて指摘したのは牧野富太郎博士でした(明治40年)。
つまり、昔から人の手で植えられて分布を広げてきた植物だということです。
そのため人里にはあっても、山の中に自生するということはありません。
ヒガンバナは鱗茎(りんけい)にアルカロイドを含む有毒植物です。
昔から墓地、土手、田んぼの畦に植えられたり、壁土の中に塗りこまれたり、
はては、球根から作ったデンプン糊がふすまの下張りに使われたりもしてきました。
いずれもネズミ・モグラなどの小動物が穴をあけたり、
ものをかじったりする害を防ぐためと言われています。
先人の生活の知恵って本当にすごいですね。
それだけ私達日本人の生活に密着した植物だったのですね。
それもあってか、ヒガンバナには曼珠沙華をはじめとして、死人花、ユウレイバナなど
日本全国で1,000を超える方言、異名があるそうです。
自然公園内では、以下のヒガンバナもご覧いただけます。
まず、シナヒガンバナ(コヒガンバナ)です。
いつの頃からか、こども広場の斜面の階段わきに、
ヒガンバナそっくりなのに、ずっと早く咲く花が見られるようになりました。
当園にはこの植物の植栽記録はありません。
花後、実がふくらむことから、これは2倍体のシナヒガンバナと思われます。
今夏は昨年よりもさらに早く、一番最初に咲いたのはなんと7月10日でした。
ヒガンバナでは考えられない実。このまま完熟に至るかはまだわかりません。
それから、シロバナヒガンバナ
こちらは2倍体のヒガンバナとショウキズイセンの自然交雑種と考えられています。
動物園内のユーラシア区やこども広場の梅林の中に点在しています。
個体によって花色に多少の幅があります。
暑さ、寒さも彼岸まで。 いよいよ秋咲きの野草のシーズンの到来です。
円海山周辺の山歩きの際は、ぜひののはな館にもお立ち寄りください。お待ちしています。
(担当:マグノリア)