更新日:2015.12.29身近なノーベル賞・イベルメクチン
更新日:2015.12.29
身近なノーベル賞・イベルメクチン
先日、北里大学特別栄誉教授の大村智先生が、ノーベル賞を受賞されました。
大村先生は「イベルメクチン」という薬の開発に携わられ、
この「イベルメクチン」が人の寄生虫による風土病の治療に大変な効果を示したとして、
その功績が評価されたのです。
動物園で働く私たちにとって、ノーベル賞は雲の上のような話なのですが、
今回のノーベル賞はとても身近なものでした。
なぜなら、このイベルメクチンという薬は、私たちも非常によく使っている薬だからです。
横浜市の動物園は、野生の傷病鳥獣の救護活動を行っていますが、
疥癬(かいせん)というダニに感染し、弱ってしまったホンドタヌキを多く保護受けします。
この疥癬ダニの治療薬として使うのが、イベルメクチンです。
この薬は非常によく効きます。
保護された時は皮膚がボロボロだったタヌキが、
イベルメクチンを投与することで一気に快方に向かいます。
疥癬が感染した保護直後のタヌキ。
衰弱が著しいため、首の血管から点滴をしています。
イベルメクチンを投与し元気になりつつあるタヌキ。
あと数カ月すると、普通のタヌキのように毛が生えてきます。
イベルメクチンは人ばかりでなく、私たちの身近な動物たちの
治療にも大変大きな役割を担っています。
今回のノーベル賞は人ばかりでなく、多くの動物たちもきっと喜んでいると思います。
(獣医:木戸)