更新日:2022.07.04キンタロウのさいごの様子
キンタロウのさいごの様子
金沢動物園40周年、ユーラシア区は数年遅れてのオープンでしたが、初期から支えてくれた、インドサイのキンタロウが死亡しました。今年の7月12日で39歳だったのですが誕生日を迎える事ができませんでした。(飼育下インドサイの寿命は35年程度)
過去のブログでキンタロウのエピソードは見て下さってる方も多いと思いますので、直近のキンタロウの様子を報告したいと思います。
4月の後半、餌の残りが多い日が見られ
「メスの発情を意識してるのかな?」とも思ったのですが、どうにも周期が違う。
体長が悪いのかなと心配していると、お腹も少し緩くなってきました。
好き嫌いが激しくなり、気に入らないものは一切手を付けません。
あんなに好きだったサツマイモも残します。
乾かした牧草類もいつも完食だったのが、だんだんと残量が増えています。
何か好きな物を見つけて栄養を取らせないとと考え、
カロリーも高く、好きな動物が多いパンを試しました。
これは口当たりが良いみたいで、最期までよく食べてくれました。
お腹の薬をこそっと隠して食べさせたりしていました。
次はカラムシ!
カモシカが好きだから与えてみたら、モリモリ食べました!同じくカモシカが好きなイタドリを与えると、どうにもこちらは嫌いみたい。
しかし、2日ほどモリモリ食べると、ぴたっと食べなくなってしまいました。
実はこれ、木の葉でも同じで、大好きだったシラカシも拒食、スダジイをモリモリ食べたかと思うと拒否、嫌いだったはずのマテバシイを何故かモサモサ食べる...。
毎日随分悩まされ、何を集めに行ったらいいのか困ってました。
湿地帯にも生息する種なので、時には湿地へ入り水草を刈って来たこともありました。
色々な草や木の葉をグルグルと種類を変えながら与え、細々いつもの乾かした牧草を食べている毎日が2か月くらい続きました。
6月16日、夕方お部屋に帰って来たキンタロウは、ここ最近の体調が悪い中では元気なように見えました。体調を崩す前は大好きだったシラカシの葉っぱを思い出したかのようにモリモリ食べていました。その様子が嬉しくて、ついつい長居をしてしまい、暗くなり始めた頃帰宅しました。
翌日の朝、顔を見に行くと既に動かなくなっていました。
前日の夜、さよならした位置とほぼ変わらない場所で横たわっていました。
部屋は綺麗なまま。
苦しくてもがいたような様子も、何も無く、ただただ眠っているようでした。
私は飼育員として、高齢動物の介護をどうするか検討していました。
足腰が弱っってしまったら、つり上げ工具などの力をかりて起立補助したり、
堅い物が食べられなくなったら流動食を作ったりとか、
もっともっとキンタロウのために働きたいと思っていました。
すごいわがままで、早く家に帰りたいと鉄の扉を破壊したキンタロウ。
水桶の中で頭を振るのが好きで部屋をぐちゃぐちゃのビショビショにしたキンタロウ。
高齢で繁殖行動がとれなくなってきたから、柵越しで人工採精の練習をしたいのに、良い雰囲気になってくるともじもじどっかへ行ってしまうキンタロウ。
そのくせお腹の下や、耳の付け根なんかが撫でられるのが大好きで、忙しい時ほどマッサージを要求してくるキンタロウ。
生きている時はあんなに手間がかかったのに、
最期は何の世話もさせてくれませんでした。
人が大好きだったキンタロウ。
三頭も子供を残した立派なお父さんのキンタロウ。
沢山の学びを私にくれたキンタロウ。
キンタロウが残してくれた多くの情報と経験を活かし、
動物園のインドサイをはじめとした動物たちのために、
また、同じく野生動物の保全に繋がる活動を、
取り組んでいきたいと思います。
最後に、今までキンタロウを応援して下さった皆様、本当にありがとうございました。
飼育担当:安藤