更新日:2024.04.05キズナ、ありがとうございました。
キズナ、ありがとうございました。
2024年3月27日、カピバラのキズナ(オス・13歳)が死亡しました。
3月の上旬あたりから軟便が続いていたため、獣医が糞の検査を行いました。検査の結果、特に問題となる寄生虫などは見つからなかったため、整腸剤を投与していました。
お腹の調子は崩していましたが、元気に歩き回り、食欲もあって、前日まで根菜類や大好きな野草を食べていました。
しかし、3月27日の朝、飼育担当者が獣舎に行くと、いつも寝室の扉の前でご飯を待っているはずのキズナが、寝室の奥で上体を崩して座り込んでいました。すぐに状態確認をし、呼吸がしやすいような体勢にしましたが、すでに昏睡状態でした。
獣医が補液(ブドウ糖やビタミン剤など)を行いましたが、その日の夕方に息を引き取りました。
この仕事をしていると、担当動物の死に直面することは避けられません。しかし、適切な表現かはわかりませんが、キズナらしい穏やかな最期でした。
キズナは、2010年8月9日にとくしま動物園で生まれ、2011年3月22日によこはま動物園ズーラシアに来ました。
ズーラシアへの入園の直前に東日本大震災が起こり、日本中が『絆(キズナ)』を大切に感じていた時であったため、当時の飼育担当者がこの名前を候補に挙げ、愛称募集により名付けました。
そして、2019年12月16日に金沢動物園にやって来ました。
その名の通り、飼育担当者にとても友好的に接してくれる個体でした。
2023年11月下旬、徐々に脚力や視力の衰えが顕著になり、転倒してしまうことが増えたため、展示を控え、QOL(生活の質)を重視した飼育管理に変更しました。
これまでよりも不自由になった部分も多かったですが、キズナの持ち前の適応能力の高さにより、周囲も驚くような回復を遂げ、2024年のお正月には「無事に新年を迎えられたね」と他の飼育員が挨拶に来てくれました。
この時、キズナの生命力の強さを実感し、飼育担当者の方が弱腰になっていたのを猛省しました。
冬季でしたが、暖かい日には自ら展示場に出て日光浴をしたり、
散歩がてら、メスの展示場に行く通路に出向き、ドングリとラザニアと扉越しに鳴き交わしたり、(写真は2023年夏)
芽吹きだした春の野草を堪能したり、
『まだまだ、こんな穏やかな日々が続くのでは?』と飼育担当者は勝手に思い込んでいました。
解剖の結果、右の腎臓に7~8㎝大の腫瘍がありました。野生動物は本能的に体調が悪くても表面上は平静を装い、伏せてしまった時には病状がかなり進行していることがほとんどです。
キズナもそのような状態に陥っていたのかもしれませんが、気付いてあげることができませんでした。
ごめんね、キズナ。
キズナはその生き方で、これまでの常識をひっくり返すような『動物の底力』を私に教えてくれました。
そんなキズナのことを私は尊敬しています。
キズナ、ありがとうございました。
2024年3月27日、金沢動物園ではソメイヨシノが咲き出しました。
毎年、桜の季節になったら、キズナに思いを馳せようと思います。
これまで、キズナを応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
(キズナファースト 大谷)