金沢動物園公式サイト

twitter facebook youtube
ツワブキ(キク科)の写真

更新日:2024.11.28ツワブキ(キク科)

更新日:2024.11.28

ツワブキ(キク科)

 この季節、長い茎の先に鮮やかな黄色の花が楽しめる植物と言えば、ツワブキ(石蕗)です。昭和33年、NHKと植物友の会が共催して「新花ごよみ」を募集した際に、12月の花に四季の最後を彩る花としてツワブキが選定されました。晩秋から初冬の10月から12月にかけ、厚くて光沢のある葉の間から長い花茎をニョキニョキ伸ばして次々に黄色の花を咲かせ、花の少ない時期に彩りを添えます。

PB123269.jpg

PB123275.jpg

名前の由来は艶葉蕗(つやはぶき)、「艶のある葉を持ったフキ」がなまったといわれています。島根県津和野町の花は「つわぶき」、語源は「つわぶきの生い茂る野」といわれていて、山陰の小京都津和野の風情を表しています。

 

 海岸沿いに多く自生し、岩の上や崖の上、また、丘陵地や林の中の日陰でもよく生えています。日本庭園では石組の間や木の根元などに点景として植えます。日本庭園は自然の景色を切り取ってあたかも目の前にあるかのように庭を造形するので、自生している風景を見ている気分になります。

DSC02636.jpg

  また、ツワブキは観賞用だけでなく、食用野草や薬用としても利用されています。

 九州南部で「フキ」といえば「ツワブキ」を指すことが多く、キャラブキ(蕗の佃煮)はツワブキを使います。春の新芽が多く出てくる3~4月は葉柄や茎柄が柔らかいため、アク抜きしたあと、スープや煮物、炒め物などの料理に使えます。

 

 もうひとつは薬用です。乾燥した根茎を健胃、食あたり、下痢に、煎じ煮詰めて飲みます。葉には抗菌作用の成分含んでいるので、おでき、打撲、火傷に用います。

 

 私はツワブキというと、大正生まれの母の思い出と重なります。小学生の頃、虫に刺されて足が赤く腫れたことがありました。母は我が家の狭い庭にあるツワブキの葉をもいできて、ガス台の火で焙り、柔らかくなったら揉んで表皮をはがし、患部に貼ってくれました。乾いたら張り替えてを何度も繰り返し、腫れを治してくれました。初めはそんなの効くわけはないと半信半疑でしたが、やってみたら確かに治ったので、次からは自分から「やって!」と母にお願いしたことを覚えています。

 

 人はそれぞれ、植物との忘れがたい思い出があるのではないでしょうか。

 

(行雲流水)