更新日:2017.03.15士別れて三日ならば刮目して相待つべし
士別れて三日ならば刮目して相待つべし
先日、2歳の誕生日を迎えたゴールデンターキンのロウ。
彼がズーラシアに来て、3か月が経ちました。
生まれて1年半の間育ってきた場所とはあまりに違う環境に当初は非常に戸惑っているようでしたが、
日を重ねるごとに、いろいろなことに慣れてきました。
そもそも、彼は和歌山県のアドベンチャーワールドの広い放飼場で生まれ、それからずっとそこで過ごしていました。
「獣舎」「扉」「寝室」という概念が、彼の中にはなかったのだと思います(「概念」という概念があるのかも不明ですがそれは哲学)。
壁の向こう、というのも初めての概念でしょう。
それでも、夕方から朝は寝室、昼はサブの運動場、というスケジュールに、次の日から付き合ってくれました。
オートドアの音に慣れるのにはかなり時間がかかりました。扉のストッパーが動く「カシャッ」という音に、ひと月ほどの間は毎回ビクッと反応していました。それでも、扉があいたらその向こうへ移動する、というお約束は、すぐに理解してくれたようです。
来園して2週間ほど経って、寝室やサブの運動場が自分の場所だ、ということに慣れてきたようなので、いよいよ展示に向けた練習を開始しました。
といっても、いきなり展示場に放飼するわけにはいきません。まずは、シュートという展示場に続く長い廊下へ出ること、そこから帰ってくることの練習から始めました。
始めはあまりに緊張して、足元の餌にも気づかないほどでしたが、3度目ぐらいには落ち着いて出入りができるようになってきました。
そして1月に入り、いよいよ展示場に出る練習を開始しました。
ゴールデンターキンはずんぐりとした体をしていますが、ヤギやカモシカの仲間。急峻な山岳地帯に生息しており、意外と跳躍力があって、少しの足場で壁も登れるほどです。不測の事態に備えて、休園日に班員総出で見張りについてもらってまずは1時間弱の展示練習となりました。
その一歩は、ロウにとっては小さな一歩でしたが、私にとっては公開に向けた大きな一歩となりました。
とても緊張していて、餌にもほとんど目を留めず荒い鼻息が園路まで聞こえるほどでしたが、
皆に見守られながら、初めての展示練習を無事に終えたのでした。
ロウの来園以来、今日までほぼ彼のことに触れず申し訳ありませんでした。
ロウは慣れない環境の中で、展示に向けて前進しております。後は担当者の工夫次第。皆様のお目にかかる日も遠くないはずです。
士別れて三日ならば刮目して相待つべし、という言葉があります。3日どころか3か月。
正式公開が決まった暁には、皆様ぜひ、括目してお待ちください。
飼育展示係 太田真琴
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士別れて三日ならば即ち更に刮目して相待つべし(三国志)
努力を続けている人は、少しの間に別人のように成長していること。後漢末期、武勇一辺倒だった呂蒙という武将が、勉学によって成長を遂げ、先輩の魯粛に「アホの蒙ちゃんはどこ行ったんや(呉下の阿蒙に非ず)」と驚かれたときに、「しばらく会うてへんねやから目えしっかり開けて良う見なあきませんで(士別れて三日ならば即ち更に刮目して相待つべし)」と返事したそうです。呉志 呂蒙伝注「江表伝」より。