更新日:2024.12.20ラーにたくさんの感謝を込めて
ラーにたくさんの感謝を込めて
みなさま、こんにちは。
悲しいお知らせをしなくてはなりません。
園からのお知らせのとおり、2024年12月13日にアカアシドゥクラングールのラー(オス)が死亡しました。
ラーは1995年12月22日にタイのバンコクにあるドゥシット動物園で生まれ、1998年8月6日にコイ(オス)とともにズーラシアに来園しました。
ズーラシアの開園は1999年4月24日なので、開園当初から多くの来園者の方々を魅了してきたことと思います。
私が小さい頃にズーラシアに遊びに来て、一目見て好きになったこのお猿さんもラーとコイでした。
最初はラーとコイの2頭でしたが、のちにワニ(メス)とツバオ(メス)が来園し、それぞれペアとなり、ラーはワニとの間にたくさんの子が生まれました。
ラーはズーラシアの開園25周年も共に迎え、28歳の今年も葉や根菜をよく食べ、展示場にもよく出て元気に暑い夏も乗り越えました。
(↑ラーのおいしーーーい!!の顔)
しかし11月中旬ごろ、後肢に衰えを感じ始め、展示等も慎重に行なってきました。
11月27日が最後に展示場に出た日になりました。
この日は後肢に力が入りにくくなってはいたものの、腕の力はしっかりとあり、気づいたらこんなに高いところまで自ら登り、ちゃんと降りてきました。
その後は柵に掴まれる範囲で暖かいお部屋でのんびり過ごせるようにしていました。
後肢が思うように動かなくなった当初はラー自身もやや戸惑い、動きたい、動ける、と腕の力でどうにかしようと動き回ることもありましたが、数日すると落ち着き、木の台の上が自分の場所になり、そこで過ごしてくれるようになりました。
アカアシドゥクラングールは木の上で生活する動物なので、地面に座るよりも、少しでも上に、でも安全に、冷えも抑えられるということで木の台を用意しました。
(↑手の届く範囲に葉っぱや餌はたくさん置き、好きなものを食べていました。)
動き回ることが難しくなってからも、食欲はありました。
大好きなサツマイモやバナナ、リンゴ、インゲンを中心によく食べ、葉っぱもこの時期にある新芽や実を他の職員にも協力してもらってかき集め、おいしい部分を食べてくれていました。
(↑獣舎前のお庭で育てたネギをおいしそうに食べるラー)
(↑ヤマモモの新芽を食べる)
徐々に硬いものやいつも食べていたものを食べる量が少なくなってきてからは、キュウリやトマト、ブドウやオレンジなど水分が多く、普段食べていなかったものを見せると目をキラキラ輝かせておいしそうに食べてくれました。
(↑トマトをほおばる)
最期の最期まで好きなものを食べられていたのは、痛みなどに苦しむことなく穏やかだった証だと思っています。
私はラーが本当においしそうに食べる姿が好きでした。
食べる口元にシワが寄るところや、 くちゃくちゃと音をさせながら食べるところも好きでした。
子どもたちに取られないように高く手をあげてる姿は人間も同じ事するなぁと思いながらよく見ていました。
ラーが何かを食べている写真や動画がたくさんあります。
どっしり構えた群れのボスであるラーにはたくさん助けてもらいました。
フランソワルトンが騒ぎだすと、アカアシドゥクラングールたちもソワソワしてしまうことがありますが、ラーはあまり気にせず、展示場に出てくれたり、部屋を移動してくれたり。
ラーが動くことで群れの仲間たちも一緒に動いてくれました。
ナイトズーラシアの時にも、暗くなってもラーが先導して必ず帰ってきてくれるので助かりました。
そして何かあると、普段は穏やかなラーが群れを守ろうと威嚇したり、手前に出てきたりする頼もしいボスでした。
ワニとサオの喧嘩もいつもラーが文字通り間に入って止めてくれていました。
群れの仲間たちはみんなラーのことが好きでした。
ペアとなり、ラーとの間にたくさんの子がいるワニは、何かが起きてもラーがいれば大丈夫と思っているような、そんな雰囲気を何度も感じました。
(↑左ラー、右ワニとダオ(子))
見たことのない食べ物、食べたことのないものも、ラーはあまり気にせず食べてくれるのですが、絶対容易に手を出さないワニ。
ワニはラーが食べる姿をじっと見ていて、大丈夫そうと思うと受け取って食べるのでした。
お互いにお互いがとても大きな存在だったと思います。
素敵な夫婦でした。
サオにとってラーは守ってくれる存在でした。
他の群れから来たサオは、いつも少し遠慮がち。
でもおいしいものは食べたい。そんな時に少しタイミングや場所が悪いとワニに怒られてしまいます。
しかし、怒ったワニに対して、ラーが怒ってサオを守ってあげることがよくありました。
ラーはサオのことをしっかりと群れの仲間だと認めていて、強すぎるワニを牽制してサオも落ち着いて、そしてしっかり食べて過ごせるようにボスとして働きかけてくれていたのかもしれません。
そんなこともあり、サオはラーの近くにいることも多く、よく毛繕いをしてあげていました。
ラーがサオの毛繕いをしてあげていることも。
お互いに気を許しているように見えました。
ホアはラーの娘です。
ホアもラーのことが大好きで、小さい頃はよくくっつきにいっていたそうです。
大きくなると群れのルールをラーから学びました。
それまでホアに餌をとられても怒らなかったラーが、いつからか怒るようになりました。
怒られることで、群れの順位、他の子の餌をとってはいけない、自分でとりに行く。というようなことを教わっていたのではないかと思います。
モイとの同居を練習している時は、隣の部屋からラーがじっとモイのことを見つめ、ホアに危険がないか見ているようでした。
ホアにとっては頼もしくて、大好きな父だったと思います。
そして、1月生まれのダオはラーのことが本当に大好きです。
ラーが自由に動き回れなくなっても、ダオはラーに抱きつきに行っていました。
そして抱きつきながらも、時々ラーのお腹のあたりを毛繕いしてあげていることも。
アカアシドゥクラングールは群れで暮らす動物です。
群れから離せば、今までボスの威厳を持っていたのに、急にしょんぼりしてしまうことも少なくありません。
そのため、ラーはできるかぎり群れからは分けずに過ごす方法を考え、最期まで群れの仲間たちと同じ空間で過ごしました。
ラーの好きなところ、かっこいいところ、すごいところ、書き出したら止まりません。
本当は29歳のお誕生日ブログを書いてお祝いしたかったのですが、悲しいお知らせになってしまい申し訳ありません。
目指せ30歳!本当に叶えられると思っていました。
年齢に抗うことはできませんが、ラーの上半身はここ数年でどんどんムキムキになっているように感じ、葉もよく食べていました。
そのおかげか、最期まで柵につかまっていることができていました。
ただ、もう少し早く足の衰えに気がつけば、負担をかけないでもう少しゆっくりと余生を過ごせたかもしれないと思うと反省もあります。
ラーには高齢個体の飼育管理について、考え、実行していく難しさとたくさんの経験をさせてもらいました。
この経験を糧にこれからも、幼齢個体から高齢個体まで、それぞれに合わせた飼育に尽力します。
ラー
アカアシドゥクラングールの魅力をたくさん見せてくれてありがとう。
たくさんの子どもたちを残してくれてありがとう。
本当に頼もしいボスであり、父でした。
みんな元気だから安心してね。
安らかに。
SNSに
#アカアシドゥクラングール
#ラーありがとう
#世界一美しいサル
のハッシュタグをつけて、ラーの写真や動画をアップしていただき、追悼の場とさせていただきたいと思います。
私も複数回に分けて、いくつかアップさせていただきますので、ぜひみなさまもラーを見たときの感動や思い出をこの機会にたくさん共有してくださると嬉しいです。
※献花台については、一定期間生花等を維持管理することが難しいこと、カラスをはじめとする野生動物等による衛生上の観点や園路に献花台を設置することによりお客様の観覧スペースや通行スペースを減らしてしまうこと等の課題がありました。
このような課題への対応に苦慮してきた経緯も踏まえ、現在は設置を取りやめさせていただいております。
ご理解の程何卒よろしくお願いいたします。
【飼育展示係 くわばら】