更新日:2017.07.30狡兎三窟(ピーターの部屋)
狡兎三窟(ピーターの部屋)
7月12日にアップされたブログで、レッサーパンダについて書くようにと圧力(?)を受けた担当者ですが、時流に流されずに書きます。
(7月12日のブログはこちら⇒ http://www.hama-midorinokyokai.or.jp/zoo/zoorasia/details/post-645.php)
ここはゴールデンターキン舎のサブパドック。
のんびりと反芻(はんすう)中のキンタツーの向こうに、最近見慣れない動物が。
ズーラシアのトウホクノウサギの中でも最年長、オスのピーター(7歳)です。
なぜ彼はこんなところに?
ノウサギファンの皆様はご存知の通り、今春メスのセリが2度も子どもを産み、一気に5頭も増えました。
個体数が増えるのはとても喜ばしいことですが、ノウサギは本来単独生活を送る動物。特にオスは他個体を攻撃することがあり、成長すると一緒の部屋で飼うことは困難です。(「淋しすぎて死んでしまう」ことはありません、ご安心ください)
子どもたちの成長を見越して飼育スペースを広げるため、一番物怖じしないピーターがターキン舎の空きスペースにやってきたのです。
狡兎三窟、とは言い古された言い回しですが(一発変換できるレベルで)、動物園では飼育スペースに限りがあるため、移せる場所を確保しておくことはとても大切なことです。なにもすばしっこいウサギに限ったことではありません。「飼育場所がないから繁殖させることができない」では動物園の機能(たとえば希少動物の保全)を果たすことができないからです。同じ獣舎内の別の部屋・同じ動物園の違う獣舎・さらには別の動物園へ、様々な形で動物を移動して飼育場所を確保していきます。
さてこのピーター。あまり物怖じしない、と言いましたが、さすがは最年長。移動してほんの数日で、見たことのないターキン担当者が入ってきても、パニックにならずに一言「プッ」と鳴いて距離をとるだけ。ただし脱兎の如き速さ。
まあ脱兎そのものですが。
さらには傍で掃除をしていても、平気で餌を食べ始める始末。
ノウサギは神経質だと聞いていましたが...
「ピーターは特別。みんなこうだと助かる」(byノウサギ担当者)だそうで。
いやいやいや、だからってリラックスしすぎでしょう。ノウサギとしてどーなんじゃいそれは。
ところで、ウサギで「ピーター」と聞くと、ビアトリクス・ポター氏の例の絵本をイメージされる方も多いのではないでしょうか。
ですが、「rabbit(ラビット)」はイギリスではアナウサギ(あるいはそれを家畜化したカイウサギ)を指す言葉で、ノウサギは英語で「hare(ヘアー)」です。ので、彼は「ピーター・ヘアー」、今すんでいるキンタツーの隣の小間は「ピーター部屋」。うん、かなり苦しい。
ああ、それと今気づきましたが、ピーター今日が7歳の誕生日ですって。
おめでとうピーター。
(レッサーパンダ・ターキン/トウホクノウサギのピーター♂部屋貸し 担当 太田真琴)
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狡兎三窟(戦国策)
すばしっこいウサギでも3つの穴を用意しておいてようやく生き延びることができる(狡兎三窟有りて僅かに其の死を免るるを得るのみ)、という話に倣って、身の安全を守るためにいくつも戦略や逃げ場を用意しておくこと。戦国時代に孟嘗君の食客である馮諼が、失脚した主君に対して後ろ盾をいくつか用意しておくことを提案したときのたとえ話。いつの時代もリスクヘッジの重要性は変わりません。「斉策」より