更新日:2018.02.04ズーラシアスクール第5回「熱帯とオランウータン」
ズーラシアスクール第5回「熱帯とオランウータン」
ズーラシアスクールの第5回は、「熱帯とオランウータン」がテーマ。
昨年度、6期生でも実施した今回のテーマですが、前回12月に実施した「アフリカの動物たち~サイのさいなん!?~」での生徒の反応を受けて、昨年とは少し内容を変更して実施しました。
その結果、オランウータンが登場するのはタイトルのみとなってしまいました。あしからず・・・
まずは、アジアの熱帯林ゾーンで熱帯気候と熱帯雨林についてのお話です。
高温多湿の熱帯雨林を体感してもらうには、この日の気温はちょっと寒かったですが、周りの木々から少しでも熱帯雨林の様子を感じてもらえたかな?
こうして見ると、ズーラシアの園内も熱帯雨林に見えてきませんか?
お部屋では、先ほどのお話の復習です。
地図上の面積だけで見たらとても少ない熱帯雨林ですが、高い木の樹冠部から地面や水中まで立体的な階層構造を持つ熱帯雨林にはたくさんの生き物が暮らしています。
実に、世界中の生物の約半数が熱帯雨林に生息していると言われています。
そんな熱帯雨林が近年どんどん減少しています。
その原因の一つと言われているのが、パームオイルを採取するためのアブラヤシの大規模農園(プランテーション)です。
パームオイル?
アブラヤシ?
プランテーション?
聞きなれない言葉かもしれませんが、宿題として実際に身近にあるパームオイルを使った製品を探してきてもらったところ、
いろいろなものがありました。
生徒のみんなに聞いてみると、これらの製品をこれまで一度も利用したことがない人は、一人もいませんでした。
世界中でたくさん使用されているパームオイル。
そのために減少していく熱帯雨林。
熱帯雨林がなくなれば、そこに生息する動植物も姿を消してしまいます。
はたして、パームオイルを使わなければ、この問題は解決するのでしょうか?
そこで今回は、パームオイルに関わる様々な立場の人になりきって、意見交換をしてもらいました。
題して、ワークショップ「~それぞれの立場で考えてみよう~ボルネオの森の未来」
まずは、それぞれのグループに割り当てられた役になりきるために、グループごとに話し合いました。
そして、自分がどんな人なのか、他のグループに向けて発表しました。
今回の登場人物はこの5人。
左から、
ボルネオの森に昔から住んでいる先住民:「伝統的な暮らしをしていて、森は家そのもの。農園ができて困っている」
自然や野生動物を守る活動をしている団体職員:「森は野生動植物のもの。アブラヤシ農園を増やすのは反対」
インスタントラーメンを製造販売する会社の社長:「安くておいしいインスタントラーメンは売れ行きも好調」
化粧品を買いに来た女性:「あれ?同じような石鹸でも『環境に配慮したマーク』がついているものがある。でもちょっと高いな」
アブラヤシ農園で働く若者:「家族がよりよく暮らせるように、一生懸命働いていい給料をもらいたい」
ひととおり、全員がそれぞれの言い分を聞き終わったら、お互いに意見交換のスタートです。
意見交換のテーマは、「アブラヤシの農園をもっと増やすことに賛成か反対か」です。
まず口火を切ったのは、
農園で働く若者グループ。
「生活のために、農園がなくなるのは困る」
「もっと農園が大きくなってパームオイルがたくさん採れれば、給料も増える」と。
同じグループの仲間からの加勢もある中、異議を唱えたのが先住民グループ。
「これまで森で暮らしてきたのに、急に森が農園にされてはこっちも困る」
「農園を柵で囲ったりしたら、自分たちも動物たちも自由に行き来できなくなる」と。
そのやりとりを聞いていたインスタントラーメン会社の社長が「君達の生活が困らないように、私が工場を建ててみんなを雇うよ。それでいいだろ?」と提案してきました。
「いや、それでは困る。お金だけの問題ではない」
「伝統的な文化を絶やすわけにはいかない」
などなど、様々な意見が出ました。
そうこうしていると、勢いよく手を挙げる新たなグループが出てきました。
「みんな自分のことばっかり、動物たちのことも考えてよ!」保護団体の職員が言います。
様々な意見が出る中で、周りの議論を静かに眺めている化粧品を買いにきた女性グループ。
「いろんな意見が出てるけど、あなたたちはどう? 他の人の意見を聞いて考えが変わったりした?」と聞いてみると、
「あまり私たちに関係ないかな」「どっちでもいい」と。
このブログを読んでいるみなさんは、もうお気づきですよね。
まさに、パームオイルの製品を利用している世界の大多数の人々の声を代弁しているようでした。
最後は、これまで役になりきって議論してきたものを踏まえて、役ではなく生徒自身に
「じゃあ、この森の将来のために、アブラヤシ農園をどうしたらいいんだろう?」と問いかけると、
「これ以上どんどん農園が増えないように、森をきっちり分けて、半分は野生動物のために残しておくのがいいんじゃないか」という意見が出てきました。
これには賛否両論の意見が出て、生徒同士でさらに議論を深めることができました。
今回は、環境や社会に配慮して生産されたパームオイルに与えられるRSPO認証を製品に示して、私たち消費者ができる『選択する』『意思表示する』という方法を紹介しました。
今回の授業が、消費者として私たちに何ができるのかを考えるきっかけになることを願っています。
授業終了後、視察に来られていた自然保護団体の方が「子どもたちの言っていることはあながち間違っていなくて、実際の国際会議でも同じようなやりとりがされている。世界の縮図のようでした」おっしゃっていました。
(ズーラシアスクール担当 川口)