更新日:2020.08.18ミナミが教えてくれたこと。
ミナミが教えてくれたこと。
8月8日、ミナミアフリカオットセイのミナミが天国に旅立ちました。
左脇の下に大きな腫瘍が見つかり、それを取り除く手術を行いましたが、残念ながら死亡しました。
ミナミは23歳、オットセイとしては長生きしたと言ってよいと思います。
開園当初に来園し、ズーラシアと一緒に成長したミナミのことを振り返りたいと言ったら、先輩が過去の写真を持ってきてくれました。
この写真は、ミナミがズーラシアにやってきたばかりの頃(1998年)です。
顔がまだあどけないですね。
推定2歳、よく見るとまだ歯が白いことがわかります。
(オットセイの歯は産まれたときは白いのですが、大人になるにつれて徐々に唾液の色で染まっていき、成獣になると黒色になります。)
そして、夕暮れのオットセイ展示場の写真。
広い展示場の中で、幼いミナミの小ささが際立ちますね。
でもこうやって代々の飼育員が大切に育ててきて、立派な成獣になったんだなということが感じられる写真で、胸がつまりました。
それからミナミは3回の出産をし、赤ちゃん誕生という幸せなニュースをもたらしてくれました。
私はオットセイの担当になって2年目です。
たった2年ですが、ミナミはたくさんのことを教えてくれました。
実は、それまで私が描いていたオットセイ像は、「全身茶色で見分けがつきにくく、なんだか地味」「餌が欲しくて人間の言うことを仕方なく聞いている」といったものでした。
しかし、ミナミは輝く水面の間から見事な流線形を描いて泳ぐ、オットセイの美しさを教えてくれました。
また「嫌なことは嫌」と顔や態度でちゃんと表現できる、賢さと芯の強さを持っていることを教えてくれました。
そして「信頼」があれば、餌も何も用意しなくても、リラックスして隣にいることができるのだということも教えてくれました。
現在、ズーラシアで暮らしているハジメとハッピーの2頭は、ミナミが遺してくれた子どもたちです。
彼らがもっと元気で幸せに暮らせるために、担当者の私にできることはまだまだあります。
悲しんでる暇はありません。
このブログを書いていて、心の底からミナミが好きだったんだなと実感しました。
今までありがとう、ミナミ。
飼育展示係 五十嵐