更新日:2021.05.01ツシマヤマネコ 赤ちゃん成長記⑦ ~人工授精編④~
ツシマヤマネコ 赤ちゃん成長記⑦ ~人工授精編④~
今回は妊娠診断とこれからの展望についてです。(前回のブログはこちら)
人工授精が終わり、期待と不安の中、妊娠診断の日を待ちました。
ツシマヤマネコの妊娠期間は65日前後です。妊娠診断は超音波診断ならかなり早い時点で診断が可能ですが、なるべくストレスをかけないために短時間でできるレントゲン撮影による診断を選びました。
これが人工授精実施51日後に撮影したレントゲン写真です。
分かるでしょうか?
無事に胎児が1頭確認できました。
精子の活動が鈍かったのであまり期待はしていなかったのですが、妊娠を確認できて本当に良かったです。
いかがだったでしょうか?
少し難しい内容だったと思いますが、ツシマヤマネコの人工授精でどのような取り組みがなされていたか、少しでもお伝えできたなら幸いです。
今回、ツシマヤマネコの人工授精に日本で初めてズーラシアが成功しましたが、この取り組みはズーラシア単独で取り組んだわけではなく、多くのツシマヤマネコ関係者の協力があって今回の成功につながりました。今後も関係者の皆さんの協力を得ながらツシマヤマネコの保全に向けてがんばっていきたいと思います。
さて、人工授精編の最初のブログでも触れましたが、ツシマヤマネコの人工授精に取り組むことに意味はあるでしょうか?
それはこれから分かることになると思います。
次の課題は人工授精の成功率がどの程度なのかを調べることです。ある程度人工授精が実用的な手法であるならば、凍結精液の使用なども含めて人工授精技術がツシマヤマネコの保全に大きく貢献できることになるかもしれません。
あともう一つ、我々が考えなければならない問題として動物福祉の問題があります。人工授精は少なからず対象個体に負担をかけることになります。我々はその点を十分に理解して謙虚に取り組むべきだと思っています。
まだまだ最初の一歩を踏み出しただけでどうなるか分かりませんが、これからも挑戦し続けたいと思いますので、今後の動向に注目していただければと思います。
医療係 東野