更新日:2022.06.16ブログで 動物病院ガイドツアー!(その5)
ブログで 動物病院ガイドツアー!(その5)
今回は幼い動物たちがいる部屋を出た先にある、ホンドタヌキの保護要因で一番多い疥癬症のタヌキたちを収容する部屋を紹介します。
疥癬症とは、ヒゼンダニというダニが皮膚に寄生して起きる病気です。ダニが皮膚の中に入り込んで増え、タヌキたちは強い痒みや脱毛が起こります。免疫力が低下してくるとさらに見た目がゾウの皮膚ような角化状態になってしまい、徐々に弱って餌が食べられなくなり死亡してしまいます。
(※4月下旬の部屋の様子です。今は全頭完治し、野生に返しました。)
駆虫薬を投与して被毛の生え変わりを待つと、本来のタヌキの姿に戻りますが、保護されるタヌキは自分の力で動けないほど弱ってしまっている個体も多く、疥癬症以外の病気を併発している場合もあり、無事に野生に戻せる確率は半分くらいとなっています。
他のタヌキなどのイヌ科動物にもうつる病気のため、駆虫薬を投与して1か月ほどはこの部屋で隔離療養します。
世話をする私たちもダニが移る可能性があるため、他の入院動物や飼育動物にも移らないように、部屋での作業は使い捨てのゴム手袋をし、長靴も専用のものに履き替えています。
十分に餌が食べられていない個体が多いため、保護後すぐは犬用のミルクとふやかしたドックフードを与え、体調が安定してきたら馬肉や鶏頭などの肉類やリンゴ、オレンジ、バナナなど果物を加えた餌に徐々に切り替えて与えます。
疥癬症は、ヒトによる環境破壊の影響で本来の住処が無くなった結果、住宅街でゴミを漁ったり、ペットの餌のおこぼれをもらったりすることで食生活が変化し、体質が変わって免疫力が低下した個体が、ごみ置き場など餌場に集まることで感染した個体との接触が起こり、感染が増えていると考えられています。
疥癬症のタヌキを保護し持ち込まれる方にも、「近所のネコたちに食べさせている餌をこのタヌキが食べに来ていて...」という話をよく伺います。野生動物は私たちが思っている以上に身近な所で生活しています。良かれと思って行っていることが、意外なところに様々な影響を及ぼしている可能性があることを、私自身、傷病鳥獣保護に携わり気づきました。
疥癬症という病気を知ってもらい、疥癬症で保護されるタヌキが少しでも減ってくれることを願うばかりです。
(飼育展示係 渡邉)