更新日:2023.03.13オカピのララに関するお知らせ
オカピのララに関するお知らせ
今日はオカピのララの近況に関してお伝えしたいことがあります。
今までも何度かブログでお伝えしてきたように、2020年からララと繁殖パートナーのバカーリのペアリングに取り組んできました。2頭の同居を繰り返し行った結果、2022年1月頃に糞中ホルモンの測定結果から、ララが妊娠している可能性が高いことが分かりました。
オカピの妊娠期間は1年3か月ほどあります。
飼育担当チームは、ララが安心して出産できるように、床に厚めのおが粉を敷いたり、万が一人工哺育になった場合の代用乳の準備などをして、あらゆる出産のパターンに備えてきました。この時期ご覧になったみなさんの中には、ララの丸いお腹にお気づきになった方もいらっしゃるかもしれません。
2023年2月28日の午後3時頃、飼育担当者が獣舎に戻ると不自然に尾を上げたままうろうろしているララを見つけました。「出産が始まる!」と思い、すぐにララを産室に誘導し、刺激をしないようにモニターからララの様子を観察しました。間もなくして、子の後足が出てきました。ララはとても落ち着いた様子で、出産は私たちが予想したより早いペースで進み、午後5時半頃ついに全身がおが粉の上に滑り落ちてきました。
モニターを見ていた全員が歓喜の声を上げたのもつかの間、よく見ると子が全く動いていません。モニターの観察では限界があったため、ララを驚かせないように産室に近づきましたがやはり様子が変です。ララを隣の部屋に誘導し、子に駆け寄りました。獣医師の指導の下、全員で濡れた体を拭きながら蘇生措置を試みましたが、子が動くことはありませんでした。
その後の獣医の検査でも改めて死産と報告されました。原因はわかっていません。
野生動物の妊娠や出産に関することは、ペットや家畜に比べて、わからないことがたくさんあります。私たちは、この貴重な経験をひとつひとつ積み重ねて、記録し、共有することで、その動物への理解を深めています。
ララの繁殖には、妊娠する前からたくさんの人が協力してくれていました。
2日に1度採集している糞から排卵、妊娠の兆候を調べてくれた横浜市繁殖センターの担当者、貴重なオカピの子育てを研究記録に残すために観察用カメラを設置してくれた大学関係者の皆様、いつもオカピの蹄のケアをしてくれている削蹄師さんたちも妊娠途中で伸びすぎたララの蹄の状態を気遣ってくれていました。
私自身も、ララの妊娠が分かってからの日々を思い出すと心に穴が開いたような気持になりますが、幸い順調に回復しているララを見て、また前に進もうと思うことができています。
最後に、いつも楽しい気持ちで動物園に来てくださったり、ブログを読んでくださっているみなさんにこのような悲しいお知らせをしなくてはいけないことを本当に心苦しく思います。
今回はまだ公開する前の出来事だったので、わざわざ悲しいお知らせをお伝えするべきか悩みましたが、動物園は生きている動物の素晴らしさを知ってもらうのと同時に命を伝える場所でもあります。なくなってしまう命についてもみなさんと一緒に見届けたいと思っています。
そして、飼育担当者としては初めての出産という経験を乗り越えたララと最後まで頑張ってくれたお腹の仔に感謝の気持ちを伝えたいです。
今後も動物たちのありのままの姿を発信していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
オカピ飼育担当