更新日:2023.05.05となりのオットセイその5
となりのオットセイその5
前回のブログ:となりのオットセイその4
ホッキョクグマ展示場のおとなり、ミナミアフリカオットセイのお話です。
ズーラシアで暮らしている3頭のうちハッピー(メス・11歳)の紹介をしていませんでしたね。
なぜかというと...
こんなふうに、ハッピーの写真はいつもブレてしまうからなのです...。
慌てん坊で、臆病な性格のハッピー。いつも落ち着きなく体を動かしています。
ハッピーが止まる時って、どんな時か考えてみました。
例えばトレーニングの時。この瞬間だけはピタッととまります。
それと...
寝ている時。
あとは驚いた時、ぐらいでしょうか。
私がオットセイの担当になったばかりの頃、ハッピーが動いてばかりいるので、健康管理のためのトレーニングができないことに悩んでいました。口の中の様子をみるための口を開ける簡単なトレーニングすらできなかったのです。
名前を呼べば近くに来るのに、私の前を落ち着きなく行ったり来たりして、止まることもできませんでした。
何か月かトライして、「ハッピーにはできないんだ」と思ってしまいました。
そんなある日、ある水族館で海獣類の担当をしている方に言われました。
「(ハッピーに)歩み寄ることをあきらめたらダメだよ」
「・・・!(私、いつのまにかあきらめてた)」
ズーラシアに戻って、すぐにハッピーのプールに行きました。
その時に気がついたのです。1秒も止まれなかったあのハッピーが、私を正面からまっすぐ見つめていることに。
「ハッピーが動いてない...」
そうです、私たちの関係は時間をかけて変化していたのです。
そして、口開けトレーニングを再開してみたところ...
なんと、あんなに頑なに口を開けてくれなかったのに、1週間もしないうちに大きく口を開けて口の中を見せてくれるようになりました。
初めてみるハッピーの小さな口の中は健康的で、ヒビも欠けもない美しい歯が整然と並んでいました。
こんなに歯がかわいらしい、と思ったのは生まれて初めてです(笑)
今回の経験を通して、動物の気持ちに寄り添って考えてみることの大切さがわかったような気がしました。
ハッピー、素敵な体験をありがとう。
飼育展示係 五十嵐