更新日:2025.01.06ワカメに感謝を込めて
ワカメに感謝を込めて
皆さんこんにちは。
昨年12月28日にチベットモンキーのワカメの死亡についてブログでお知らせさせていただきました。
急なことでしたのでお知らせだけのブログとさせていただきましたが、今回はワカメについて写真とともに振り返ってみたいと思います。
とてもありがたいことにワカメの担当を代番(担当者がお休みの日に飼育を担当します)含めて9年間させていただきました。若かったワカメ、高齢になったワカメ、群れでいたワカメ、一頭でいたワカメ、色んなワカメを見てきましたのでワカメとのたくさんの思い出があります。
2012年に私がズーラシアに就職して1年目、代番としてチベットモンキーの担当となりました。このときワカメは18歳。オスのイルミ、メスのナナもいました。18歳のワカメはとても威勢が良く、オスのイルミも一緒だったのでとても強気で新人の私に動いただけで毎回フェンスを叩いたりフェンスに飛んできたり、今思い返すと本当にすごかったです。
先輩からは「目を合わせると喧嘩の合図になるから、おでこの部分をぼんやり見て顔や全身の観察をするんだよ」と教わりましたが、目なんか合わせなくてもいつでもワカメに怒られていました(笑)
まだその時はチベットモンキーというサルについてもよく知らなかったのでただただ「怖い...チベットモンキーってなんでこんなに怒るの?」という印象でした。
写真(右:ワカメ、左:ナナ)
1年代番を担当してその後一度離れ、2017年からチベットモンキーの担当となりました。このときワカメは23歳。ナナは2017年に死亡しイルミと2頭となっていました。相変わらず強気なワカメ。しかし代番の時とは違い、担当になると接する時間も増え、イルミと一緒にいるときは私に対して怒ることも多かったですが、イルミが見えないところではお尻をこちらに見せてくれたり、歯をカチカチする表情など友好的な行動を見せてくれるようになりました。
2頭を観察しているととても表情が豊かで、鳴き声でのコミュニケーションも多く、チベットモンキーはとても魅力的なサルで面白いなぁと日々感じていました。
ワカメはとても食に貪欲でイルミが食べずに落としたものを全部残さず拾って急いで頬袋に入れていました。その時私がいると取られまいと私に睨みを効かせていたのもいい思い出です。
2022年イルミが死亡し残念ながらワカメ1頭となってしまいました。今まで群れで暮らしていたため、気を落として食欲や元気がなくなってしまわないかとても心配でした。ですがそんな私の心配をよそにワカメは毎日餌をたくさん食べ、元気に展示場で過ごしてくれました。
ただ1頭だと時間を持て余してしまいますし、少しでも心の拠り所になってくれればとこれまで以上にワカメに声をかけたり時間をかけるようにしました。
退屈にならないように展示場に竹筒や消防ホースで作ったフィーダーをおいたり、落ち葉の中に落花生などワカメの好物を隠したり、ワカメは物怖じしない性格だったので全部に興味を持ってくれました。
28歳、29歳と誕生日をお祝いして、ワカメも段々と高齢となり腰もだいぶ曲がり威勢も少し弱くなっていました。歳を取って性格も少し丸くなったのか、関わる時間が増えたためか私に対して威嚇することもかなり少なく、友好的な行動をたくさん見せてくれました。
そして2024年6月、日本モンキーセンターからミートがやってきてくれました。しばらくは同居せず別々の部屋で飼育をしていましたが、お互いに友好的な鳴き交わしをしていることや、フェンス越しでミートとタッグを組んで私に威嚇してきたことから2頭を同居させても大丈夫と判断して10月に同居を開始しました。
初めて同居をするときには闘争がおこる可能性もあり心配でしたが、控えめなミートをリードするようにワカメが積極的にミートに近づいて関係を築こうとしており、それがとても印象的でした。そしてすぐ2頭は仲良くなり、2頭で展示場で過ごし、毛づくろいをしたりする仲となりました。
同居前はミートにとっては新しい環境だったので1頭ではなかなか落ち着いて展示場で過ごすことができませんでした。
同居後は2頭で展示場で落ち着いて過ごすことができるようになりましたが、どうしても展示場に出るときと帰るとき、ミートが警戒してしまっていました。そんな時はいつもワカメが後ろを振り返り、ちゃんとミートが来ているか確認して、いなかったら迎えに行くなどしてミートを誘導してくれました。ミートが展示場に出られるようになったのはワカメのおかげです。
ワカメは今まで1頭でいたときよりも動きが良くなり、威勢も戻り少し食欲も上がりとても嬉しかったです。ミートと一緒に私に威嚇してきた時は少し寂しく感じましたが、ミートとの毛づくろいや音声コミュニケーションをみてこれが本来の姿でやはり私が時間をかけて接しても本当のチベットモンキーには敵わないよなぁ、ミートが来てくれて良かった!と心から思いました。
チベットモンキー舎を夕方消灯する際に、毎回必ずワカメとイルミは鳴き交わしをしていました。どんな意味があったのかはわかりませんが毎回でした。ですのでワカメ1頭になっても毎回、「電気消すよー、また明日ねー」と声をかけると「フォー、フォー」と私に返してくれました。それが嬉しくて私もまた「また明日ねー、おやすみー」「フォー、フォー」この繰り返しでなかなか獣舎を離れられませんでした(笑)
これはミートと2頭になっても変わらず、ワカメだけ消灯時なきかわしてくれていました。死亡する前日の消灯時も、私の消灯の声に反応して鳴いてくれました。
いつも調理室で窓を開けて餌を切っていると、ずっとその様子を展示場から見ていたワカメ。今でも時々癖で窓から展示場を見てしまいますが、先日ミートがワカメのように私のことをみていてなんだか少し背中を押されたような感覚でした。ワカメの体調が悪くなった時、ミートはずっとワカメの隣にいて毛づくろいをしてあげていました。ワカメの最期が1頭ではなくミートがいてくれて本当に良かったと思います。
ミート、ありがとう。
たくさんの来園者の方たちにチベットモンキーの魅力を伝え続けてくれたこと、そして9年間の担当を通してたくさんのことを教えてくれたこと。
ワカメ、本当にありがとう。たくさんの感謝の気持ちを込めて。
チベットモンキー担当 坂上