更新日:2021.07.30親離れ・子離れ
親離れ・子離れ
2020年5月29日生まれのオスの子供のタイヨウ。ついにオスの群れに引っ越しをしました。
その日は突然やってきました。
今まで金沢動物園では、オオツノヒツジのオスの子供は、1歳頃になると母親から離れて、メスの群れからオスの群れに引っ越しをしていました。
野生下では、子供は2歳前ぐらいまで母親と共に暮らしているので、オスのタイヨウも2歳くらいまでメスの群れで過ごさせてみようという事にしました。
(母親のチャグ(右)よりも体が大きくなったタイヨウ(左)。まだまだ甘えん坊です。)
1カ月先に生まれたソラ(メス)は半年ほどで離乳しましたが(通常は半年ほどで離乳します。)、タイヨウは1歳1カ月を過ぎても、母親のチャグに甘えておっぱいをもらっていました。
そんな甘えん坊のタイヨウが、7月に入ったころから、ザビコに対して騎乗しようと追いかけまわすようになりました。
タイヨウも、オスとしての本能が出てきました。こうなってしまっては、メスの群れで暮らしていくことはできません。
急遽、タイヨウの引っ越しが決まりました。
そんなこととは知らない、タイヨウとチャグ。引っ越しの前日も仲睦まじく一緒に休息をし、まだおっぱいをもらっていました。
(いつも一緒にいるチャグ(手前)とタイヨウ(奥)。)
(「ママ、おっぱいちょうだい。」チャグも、嫌がらずに飲ませています。)
引っ越し当日の朝。何も知らないタイヨウ。いつものように、「おいで~。」と声をかけると、何も疑うことなく個室に入ってきました。そして輸送箱に入れるために箱のふたを開けると、警戒心のあまりないタイヨウは、箱の中に興味深々。自分から箱の中に顔を入れています。さらに、大好きなペレットを箱の反対側に入れてやると、食べたいあまりに、自分から輸送箱に入っていきました。輸送箱に自分から入っていく個体は初めてです。素直すぎるよ、タイヨウ・・・。
(「何やってんの~?」獣舎に置かれた輸送箱に興味津々。左からチャグ、ノゾミ、タイヨウ)
(「箱の中身はなんだろな~?」と顔を突っ込むタイヨウ。)
タイヨウが入った輸送箱は、そのままオスたちの暮らすオオツノヒツジ舎へ。スムーズに引っ越しは終わりました。
(タイヨウ、オス群の獣舎に到着。オドオドしています。)
タイヨウは見たことがない場所と、母親のチャグがいないことでプチパニック。1日中呼び鳴きをしながら、ウロウロしていました。
一方、母親のチャグも、タイヨウがいなくなったことで、呼び鳴きしながら落ち着きません。
大きくなったタイヨウに、毎日おっぱいを飲ませていたチャグ。急にいなくなったことにパニックになるのも無理はありません。
タイヨウは引っ越し3日目にオスの群れにデビューしました。他のオスたちに追いかけまわされて攻撃されるのではないかという事態に備えて、担当をはじめ、合計3人のスタッフで見守っていましたが、他のオスたちは、「こいつ誰?」と確認する程度で、タイヨウに興味を示すことなく、いつものように過ごしています。タイヨウは、特に干渉されることもなく、ポツンと1頭で過ごしています。
(「お前、誰だよ!」とタイヨウ(右)に近づくオーキッド(左)。タイヨウ、固まってしまいました。)
一方チャグは、引っ越しをした日から落ちつかず、鳴きっぱなし。なかなかタイヨウがいなくなったことを受け入れられません。これだけは、担当者もどうすることもできません。それでも少しずつ呼び鳴きも減り、引っ越しから1週間ほどたったころ、ようやくチャグも受け入れることができたようで、のんびりとした日常に戻りました。チャグも子離れできたようです。
タイヨウはまだ群れの一員になっていないようですが、タイヨウのペースで群れになじんでいってくれるように見守っていきたいと思います。
(展示場にデビューした日。緊張と不安でいっぱいです。)
タイヨウは甘えて鳴くことがありますが、きっと大丈夫。
親離れという大きな試練を乗り越えて、立派なオスになってくれるはずです。
がんばれ、タイヨウ!!
さとう