更新日:2022.08.06 袋のはなし② ー育児嚢の観察ー
袋のはなし② ー育児嚢の観察ー
先日ブログでお知らせしましたが、高齢個体の乳腺癌が見つかったことをきっかけに、今年度から普段の健康チェックに育児嚢の観察も加えることにしました。
何か病気が見つかったからといって、治療が出来るかどうかは分かりません。ただ、育児嚢を見せてくれるくらいの関係が築ければ、普段からの健康管理がより円滑に行えるはずなので、そこを目指してまずは馴致から。
とは言え、はいどーぞ!と見せてくれるわけもなく、育児嚢を触る所から慣れてもらうわけですが、意外にもスムーズに対応してくれる個体もいるので、その様子をご紹介。普通のカメラでも撮影は可能ですが、育児嚢を広げてライトを持ってカメラを持ってと手がふさがってしまうので、今回は先端にライトが付いた特殊な小型のカメラを使って観察します。先が細いので、育児嚢を大きく広げる必要がなく、カンガルーたちも負担も最小限で済みます。
狙う乳首は、↓この辺り。
このように↓ピーンと背を伸ばしてくれるように、サツマイモを使って誘導します。
前かがみ↓だと、上手く見えません。
手元のモニターを見ながら、乳首やその周辺に異常がないか見ています。
実際に取れた映像から、抜き出した画像がこちら。ちょっと点線で加筆しましたが、右側の上下の乳首が観察できました。この日はきれいに掃除されているので、ピンク色でした。
↑は7/24。同じ個体の同じ乳首ですが、7/12の様子はこちら↓。
茶色っぽく見えるのは、汚れです。
別の個体の乳首はこんな感じ。
育児嚢の掃除は気分でやるのか?実は発情周期と関係があるのかも?乳首の形状が違うのは個体差なのか?授乳経験の有無の差なのか?まだまだ分からないことだらけで、ワクワクします。
オオカンガルーのメスは分かりやすい発情行動がなく、発情メスに反応したオスたちが騒ぐことで、メスの発情を把握しています。育児嚢を定期的に観察できるようになれば、健康管理はもちろんのこと、発情行動と育児嚢の様子のリンクや、繁殖を再開した暁には出産前の様子、こどもが生まれればより詳しい成長記録が取れるのではないか⁈と、期待しています。
まだ育児嚢を見せてくれる個体は、ほんのわずか。未来の発見のために、カンガルーたちに負担のかからない方法を模索しながら馴致の日々が続きます。
そんなわけで、ウォークスルーで白い機械を持った担当者がカンガルーに逃げられながらウロついていますが、暖かい目で見守っていてください。
(しばた)