更新日:2020.01.28ズーラシアスクール第5回「ライオンと共に生きられるのか」
ズーラシアスクール第5回「ライオンと共に生きられるのか」
みなさま、こんにちは。
1月18日にズーラシアスクール第5回目を行いました。
今回のテーマは「ライオンと共に生きられるのか」でした。
「ライオン」と「住民」の立場から、専門家でも根本的な解決はできていない問いを、みんなで考えてみました。
当日は、雪が降る中でしたが、多くのスクール生が参加してくれました。
また今回は、ズーラシアの共同研究者で動物園教育の専門家である松本朱実さんにもご参加いただきました。
まずは、宿題発表です。
ライオンが増えているか、減っているか、その理由はどんなものがあるのか、発表してもらいました。
ほとんどの人が、ライオンは「減っている」と答えました。
減少理由として、狩猟、毛皮のための狩猟、密猟、乱獲、生息地の減少などが出ました。
次に、実際のライオンがおかれている状況のレクチャーを行いました。
実際、全体的にライオンの生息数や生息地は減少しています。
ただし、ある程度管理がしっかりしている一部地域では、生息数が増えているところもあります。
生息数の減少原因として、生息地の減少、獲物の減少、薬用のための密猟、害獣駆除などが言われています。
スクール生たちは、予想していたよりも、実際のライオンの生息地や生息数が減っていることや人口が増えていることに驚いている様子でした。
今回は、減少原因の中でも、害獣駆除の問題を考えていきました。
現地では、ライオンが家畜や住民を襲うことがあります。
その対策として、ライオンを駆除しています。
次に、今回考える「住民」「ライオン」のイメージがつきやすいように、ライオンが餌を食べる姿を観察しました。オスのライオンが立ち上がるとこのくらいの高さになります。
子牛の骨付き肉を食べています。
バリバリと音を立てて食べる姿を、前肢の使い方、歯の使い方など、共同研究者の松本さんの問いかけも加わり、スクール生も集中して観察していました。
教室に戻ってきて、今回の本題です。
「ライオンと共に生きられるのか?」
ライオンと住民の立場から害獣駆除問題を考えます。
話し合いは、ライオン2チームと住民2チームに分かれて話し合いました。
話し合いのルールは、ズーラシアスクール第2回目でおこなった「哲学対話」のルールから抜粋しました。(→ブログはこちら)
ライオンチームには
「なぜ家畜や人を襲うのか?」「どのように襲っているのか?」
「どうすれば家畜や人を襲わないようになるのか?」
住民チームには
「なぜライオンを殺すのか?」「どのように殺しているのか?」
「どうすればライオンを殺さないようになるのか?」
という問いを、段階的に考えてもらいました。
住民チームからは、「なぜライオンを殺すのか?」の問いには、自分たちの命を守るため、復讐、お金のため、などの意見が出ました。
「どのように殺しているのか?」の問いには、銃、罠、毒殺などの意見が出て、刀などの刃物では難しいだろうという意見も出ました。
「どうすればライオンを殺さないようになるのか?」という問いには、保護施設を作る、麻酔をかけて移動させる、壁を作る、人が移住する、ライオンを移動させる、ライオンが嫌がるもの(毒ガス)で近づかせない、ライオンを家畜化(ペット化)する、などの意見が出ました。
ライオンチームからは、「なぜ家畜や人を襲うのか?」の問いには、復讐、ライオンの縄張りに人が入ってきた、餌になる動物がいなくなったから、自分たちが生きるため、などの意見が出ました。
「どのように襲っているのか?」の問いには、キバやツメを使う、柵を壊して襲う、群れのチームワークを使って襲う、囲んで後ろから襲う、などの意見が出ました。
「どうすれば家畜や人を襲わないようになるのか?」の問いには、人がライオンを殺さなければよい、人が移住する、人がライオンの縄張りに入らない、すみわけ、人が草食動物を獲らない、自然を増やして草食動物を増やす、柵を作る、人から餌をもらう、住民がいないところへ行く、などの意見が出ました。
そして、最後に「人間」という立場から、「ライオンと住民両方を守るために何ができるか?」という問いを考えてもらい、1つに絞ってもらいました。
非常に短い時間だったので、すべてのチームでまとまった意見を出すことは難しい状況でした。
その中で、ライオン2チームからは「草食動物の餌になる植物を増やす」という結論が出ました。「植物が増える」→「ライオンの餌になる草食動物が増える」→「ライオンは維持・増加」「人は襲われなくてすむ」といった理由です。
そのためにどうするか、さらに考えていく必要もありますが、今回はここまででタイムオーバーです。
まとめとして、「現地でどのようなことが行われているのか」をスクール生に伝えました。
現地では、「法律で狩猟を規制、その代わりに家畜に被害があった時には補償金を与える」「フェンスで囲って物理的に接触しないようにする」「ライトの光を使ってライオンを退ける」などの対策が行われています。
この中で、「ライトの光を使ってライオンを退ける」という対策は、現地の11歳の少年が考えて、おこなったものです。
スクール生は、現地アフリカで同年代の少年が考えた対策を、集中して聞いてくれているようでした。
最後に、スクール生の今回の振り返りとして、私たちの現地である「日本の害獣問題」を考えてきてもらうことを宿題として、終了しました。
このような、動物と人間のかかわりで生じる問題は根本解決は難しいものです。
ただ根拠を持って、考えることを続けないと前には進まないと思います。
今回の授業が、スクール生にとって、動物と人間のかかわりをいろいろな立場から考えるきっかけになってくれていると幸いです。
ズーラシアスクール担当:有馬 一