更新日:2021.03.15先週のチンパンジー⑦
先週のチンパンジー⑦
先週のある日、展示場清掃をしているとふと。
すごい数の手形が.........(屋外第一観覧所)
こんなところにも
屋外第二観覧所にも
実はこの手形ほとんどがリーダーのカズヤのものです。チンパンジーのオスはディスプレイ(体を揺らしたり音をたてたりして自分の強さを見せる誇示行動)を行いますが、多い日では1日10回にも及びます。
カズヤはどこを叩けば大きな音が鳴り、自分の力を強くみせることができるかわかっています。ここはカズヤのお気に入りの場所のようです。
群れの中で影響力を持つのもリーダーの役割。手形の数だけカズヤの努力が見えますね。
屋外展示場をご紹介したついでに、最近のチンパンジーたちの過ごし方をちょっとお見せしますね。
チンパンジーの屋外展示場にはたくさんの植物が植わっています。
では、何の種類の植物か考えたことはありますか?
大きな木は落葉樹・常緑樹があり、野草にも一年草・多年草と様々な種類があります。
そのため、チンパンジーたちは季節によって違う食べ物を展示場内で探しまわっています。
最近はツルグミが実をつけているので、チンパンジーは草木をかき分け取りに行っています。
写真はアラレ(メス)です。
こちらはインコ(メス)です。
同じ木の中でもおいしそうな実を探しては手で取ったり直接食べたりして楽しんでいます。
食べる植物も食べる実も食べ方でさえも自分たちで選択して食べているのです。
そして、これらの採食行動の面白いところが2つあります。
1つ目は、普段チンパンジーはツルグミを避けて移動しているということです。
ツルグミの群生場所は展示場内に3か所ほどあります。しかし、ツルグミにはトゲのような小枝があるため、あまりかき分けて通りたい場所ではないようで普段は避けるように獣道ができています。
ところがこの時期になると、外側からも取れるのにわざわざ中に入り込んでまで好みの実をとりに行くのです。これは実がおいしいという理由だけでしょうか.........?
2つ目は、おとなのメスのチンパンジーが積極的にとりにいっているということです。
おとなのチンパンジーは子どもに比べて活発に活動することが少ないです。そして、オスは群れの異常がないか見回りをしますがメスは基本的にのんびりしていることが多いです。おとなのメスに飽きさせずに採食してもらうのは担当者としての課題でした。
そんなおとなのメスが中心になり展示場内にの植物を食べている姿に、子どもたちも興味津々によってきます。その様子はこの時期はこれがおいしい、と子どもたちに伝えているようでした。
ちなみに、おとなたちがあまり登らない木の上の新芽は子どもたちのごちそうです。
行きにくい場所にわざわざ行く目的や季節によって食べたい植物を選べる。そしてそれらを次世代のチンパンジーに教えて群れを作っていく姿。我々、飼育員が教えることができないことをチンパンジーに考えてもらうにはやはり選択肢はいくらあっても困らないようです。
2年目飼育員 脇田