更新日:2021.04.03フクの出園とゴウの入園(前編)
フクの出園とゴウの入園(前編)
先日のブログでもお伝えした通り、3月17日に無事フクの出園とゴウの入園が完了しました。
今回は当日の様子を少しご紹介します。
フクは麻酔をかけて事前の健康チェックと個体識別のためのマイクロチップ挿入を行いました。
フクにとって麻酔をかけるのは初めての経験のため、どのような反応をするのか予想しにくかったです。
麻酔をかける前段階として問題となるのは同居しているサチコ(母)とハル(妹)と隔離させることです。チンパンジ―たちは夜間、個室ですごしていますが親子は同室にいます。
ハル(左)サチコ(右)
フクをサチコとハルから隔離する時は、日ごろの関係性が試される時でした。
フクを移動させていたのは、信頼関係のある担当者だったため難なくわけることができました。そして、こちらの心配をよそに問題なく麻酔をかけることができました。
普段からトレーニング通してチェックしていましたが、改めて見てみるといろいろとわかることがあります。手足の大きさや筋肉の付き具合や体重。体重はこちらが予想していた、40kgを大きく上回る45kgでした。これはおとなのメスと同じくらいの体重なので、本当に大きくしっかりと育ってくれたと担当者一同感心していました。
さて、マイクロチップの挿入も終わりいよいよ輸送箱に入る時間です。
フクが生まれた時から担当している担当者が、新しい群れでも幸せになれるよう、祈っていました。過ごしてきた時間が長いため、感慨深いものがあると思います。
麻酔から覚めてから、いよいよ出発です。
ゆっくりと指や腕が動き始め、徐々に顔をあげて周りを見渡していました。
少し意識がはっきりしてきたところで担当者全員で車へ輸送箱を運びます。
作業中はあまり考えていませんでしたが、車に運び込むと本当に移動するんだなと実感が湧いてきました。
フクは当園で初めて生まれたチンパンジーです。
今まで、群れの中で出産を見たことが無かったチンパンジーからすると、初めての子どもというのはとても興味を引く存在だったかと思います。特にヨシズは気にする様子が見られ、アラレはどう接したらいいかわからないようだったと当時を知る担当者から話を聞きました。
チンパンジーはおとなになると全身真っ黒になりますが、子どもの頃は耳や顔や手足の先がうすだいだい色をしています。フクは顔の上半分から黒くなっていきました。もう今のフクの顔つきと同じ感じになっていますね。
フク(左)マリモ(右)
出生日が9か月しか変わらないマリモとはよく遊んでいたそうです。同年代の遊び相手がいるのはとても大きかったと思います。搬出日の前日まで一緒に遊んでました。
フクにも妹ができました。現在3歳のハルです。
率先してハルの面倒を見たり遊びに誘ったりしていました。母親のサチコが展示場ではのんびりと過ごすため、まだ単独では行動できないハルをフクが木の高い所や、他のチンパンジーがいる場所に連れて行くことで様々な経験を積むことができたと思います。
フク、マリモ、ハルの3頭は、私が担当者の中でも1番下っ端だったこともありからかわれたり、追いかけっこをしたりとたくさん遊んだ思い出があります。
フクはとても賢く、担当者が何を言いたいかわかっているようでした。投薬もすぐに見抜かれるので与え方も色々検討しました。また、気さくで優しく、人に対しても恐怖心を持たないチンパンジ―でした。
しかし、子どもからおとなに変わる、人間でいう思春期の時期になると状況も変わりました。周りのおとなが子ども扱いしてくれなくなり、あたりが強くなったり、ホルモンバランスが乱れイライラしてやつあたりをしたり、母親のサチコをもっと独り占めしたかったのかもしれません。
それでも、移動先である日立市かみね動物園での群れのアルファオス(リーダー)への接し方を聞くと、しっかりチンパンジーとしてたくましく成長してくれたと担当者一同、誇らしく思います。
私の中では、フクはよくおいしそうにカボチャを食べていた印象があります。
フクが出産し、しっかりと子育てしている姿を見たいですね。
頑張れフク!!!
長くなってしまったので前編・後編にわけました。
3年目飼育員 脇田