更新日:2021.05.06チンパンジーのあれこれ③ オスとメスの順位の差
チンパンジーのあれこれ③ オスとメスの順位の差
前回、チンパンジーの順位がケンカが強いということだけでは決まらない。とお話しましたが、では何で決まるのでしょう?
まず、はじめにオスとメスでは順位に必要な要素が違います。
オスのチンパンジーが順位を上げていく方法はいくつもあり、必ずしもこれだ!といったことはありません。もちろん、外敵から群れを守るため体の大きさや健康は大事です。
しかし、ズーラシアのアルファオスのカズヤを見ていると性格面の方が大きいような気がします。
カズヤの群れの中での行動で目立つのは、①ケンカの仲裁 ②見回り ③子どもと遊ぶ です。
どれも性格的に優しく、マメでないとできない内容です。どれか1つでも欠けていると群れの仲間からの信頼を失ってしまい、アルファオスを続けることが難しくなります。
カズヤは群れに認められてアルファオスを務めることができるのです。
(子どものハルと遊ぶカズヤ)
野生ではおとなになったオスは、より高い順位を目指しおとなのメスを威圧していきます。順位が高いメスの大部分を従えた時点でオスの中での順位の最下位につきます。
そして、時には体を大きくみせて相手を威圧し、時には同盟関係を結び順位を上げていくと言われています。
(体も大きく心も広いカズヤ)
メスの場合、順位はより複雑でハッキリとわからないということが多いです。そして変動が激しいためすぐに順位が変わります。
メスは年長であれば群れから一目置かれ、順位が上がりやすくなる傾向があります。また、産んだ子がオスで、子が成長して順位が上がると母親の順位も同時に上がるというオスに比べて特殊な変動もあると言われています。その他にも食料の獲得率に影響される場合もあると言われています。
(左:タマエ 中央:インコ 右:マリモ)
メスは食料を独占すると他のメスに取られないようにします。上の写真では、タマエが手に取っているかぼちゃをマリモとインコが欲しそうにしています。
チンパンジーは基本的に他個体が持っているものは無理やり奪わないというルールがありますが、それでも中には上手く譲ってもらう個体もいます。当園では最年長のサチコによく見られる行動です。
サチコは、日中はのんびりしているのでおやつをあげる時もすぐに来るわけではなく、あまり食料を確保できているように見えません。しかし、アルファオスのカズヤや順位の高いタマエからうまく譲ってもらっているところを見ます。年長であるため、他個体からもらうのが上手くなったのか、それとも年長であるため一目置かれてもらえるのか.........どちらにしろ順位では測れない関係性がありそうです。
そして、オスでもメスでも順位にあまり関心を示さない個体もいます。
当園ではインコやアラレです。
インコ(メス)
アラレ(メス)
チンパンジーにも色々な個性があり、性格も異なるため「チンパンジーはこういう動物だ!」と先入観を持つのはもったいない気がしますね!
個体ごとの関係性、じっくり観察してみてください!
3年目飼育員 脇田