更新日:2021.04.29ツシマヤマネコ 赤ちゃん成長記⑥ ~人工授精編③~
更新日:2021.04.29
ツシマヤマネコ 赤ちゃん成長記⑥ ~人工授精編③~
今回は2021年1月11日に実施した人工授精についてのお話です。(前回のブログはこちら)
ツシマヤマネコの人工授精は「腹腔鏡下卵管内人工授精」という方法を用いました。
簡単に説明すると、排卵された卵子は卵管膨大部で精子と出会って授精が成立します。この方法では精子を直接卵管膨大部に注入します。このことにより精子は長距離を移動する必要がなくなるため、少ない精子数でも受精が期待できるのです。
この方法を用いることによりツシマヤマネコにおいて人工授精を成功させるために乗り越える必要がある2つの問題、すなわち人工授精を実施する際のメスの解剖学的な問題とオスから採取できる精子量が少なく質が悪いという問題を克服することができる可能性があります。
まず、麻酔をかけて腹腔鏡を設置します。
設置完了したら卵巣を確認します。卵胞がよく発達しているのが分かります。
左右の卵巣に卵胞が発育していることが確認できたので、卵管に精子を注入します。
まず自作した注入器に精子を吸引して、
卵管を傷つけないように慎重に注入器の先端を卵管内に挿入します。卵管の直径は1mm程度なので繊細な技術が必要です。挿入できたら精子を注入して人工授精は終了です。実際の注入は左右合わせて数分で終了します。
精子を注入した際の腹腔鏡の画像はこちらです。
これで人工授精は終了です。
この後は飼育施設の温度を10度以上に保ち、ストレスを与えずに飼育してもらいました。
次回に続きます。
医療係 東野