更新日:2021.06.29さよなら、ナクル
さよなら、ナクル
みなさん、こんにちは。
ケープハイラックス担当の矢向です。
今回は、みなさんに悲しいお知らせがあります。
6月17日に、ナクルがこの世を去りました。
2日前は食欲もあり、普段と変わらず展示場に出ていました。
前日
朝、ハイラックス舎に行くと、いつもいる場所ではなく、床に伏せていました。
展示場に出る扉を開けると、トボトボと出ていきました。
しかし、展示場にある木のトンネルの中でぐったりとしていたり、いつもの場所で糞をしていなかったりと、普段とは違う行動が見られたため、午前中で寝室に戻し様子を見ました。
この日は刺激をすると怒るので、怒るだけの体力があることは確認できました。
17日(当日)
朝、ケープハイラックス舎に行くと、すでに死亡していました。
夜間に死亡したと考えられます。
死因を特定するため、解剖を行いましたが、原因はわかりませんでした。
現在は、精密な検査を依頼して、その検査結果を待っています。
ナクルは南アフリカから来た野生由来のケープハイラックスで、推定2013年3月生まれです。今年で8歳でした。
ズーラシアにいるケープハイラックスの中で、警戒心は強いものの、比較的人に馴れていた個体でした。
網越しではありますが、手からエサを与えることもできました。
食欲旺盛で、エサはいつも完食をしていました。
ケープハイラックスの体重は、だいたい2,500~4,000gとされています。
しかし、ナクルの体重は4,900gと大きく数字を上回り、体格ががっしりとしていました。
発情期(ズーラシアでは10下旬~11月上旬)になると、展示場でよく鳴いたりしていました。
冬になって展示場にヒーターを入れると、ナクルはヒーターの下で横になりながら大胆に暖まっていました。
このように足を投げ出して横に暖まることはナクルだけに見られ、愛らしい姿が魅力的でした。
ときどき、喧嘩をすることもありましたが、トロロとナクルの2頭は寄り添うようにいつもそばにいました。
飼育員になって初めてこのような場面に直面し、とても悲しい気持ちでいっぱいになりました。
動物の飼育をするということは、動物たちの命を預かり、その責任を日々の飼育管理の中でまっとうしていくことと個人的には思います。
ナクルがこの世を去ったことで、「ナクルは幸せだったのか?」「もっと自分にできることがあったのではないか?」と自問自答することが増えました。
答えを見つけてもナクルに恩を返すことはできませんが、
他の個体に活かしていきたいと思います。
これからも動物の福祉と幸福のことを考え、可能な限り実行していき、日々の飼育管理に精進していきたいと思います。
動物福祉とは、動物が肉体的・精神的に十分健康で、幸福であり、環境とも調和していること。
飼育展示係 矢向