更新日:2022.09.13ツシマヤマネコの住む対馬③
ツシマヤマネコの住む対馬③
前回、ツシマヤマネコの交通事故対策をいくつか紹介しました。
(これまでのブログはこちらから→ツシマヤマネコの住む対馬①、ツシマヤマネコの住む対馬②)
8月に訪問した際、偶然にも昨年の10月に交通事故にあった保護個体の放獣を行うということで、急きょ立ち会わせていただくことになりました。ケージの中にトラ吉と名付けられた保護個体が入っています。
写真はきれいに撮れていませんが、ケージを開けるとすぐに小走りで去っていきました。
放獣される個体には小型の発信機がつけられており、この後どのように移動していったか追跡調査が行われます。(最初の数日間は24時間体制で付きっきりで追跡するそうです。)
トラ吉は骨盤骨折という重傷を負っていたようで、懸命な治療やリハビリの結果、ここまで回復しましたが体の状態には心配が残ります。
そのため一定期間経過後、再び捕獲し餌がちゃんと捕れているかやけがの状況などを検査し、この先野生で生きていけるかどうかの判断を行うそうです。
放獣には対馬野生生物保護センターの方、環境省の方を始め、追跡調査をする方、報道の方など多くの方々の努力、そして協力があって実施されているのだと知ることができました。
トラ吉が、この後も野生で無事に暮らしていってくれることを願うばかりです。
この放獣については環境省のアクティブ・レンジャー日記(9月1日付の記事)でも掲載されておりますので、ぜひご覧ください。(こちらをクリック→アクティブ・レンジャー日記)
環境省によると統計を取りはじめた平成4年度(1992年度)から、ツシマヤマネコ交通事故発生件数は累計で137件(死亡が125件)起こっており、最近だと令和3年度は8件、令和4年度はすでに4件発生しています。(8月31日時点)
事故が増えるのは秋~冬で、この時期は親離れの時期にあたります。若い個体が自分の縄張りを求めてよく動き回るため事故に遭ってしまうことが多いそうです。
野生のツシマヤマネコの生息数は推定90~100頭ほどといわれており、今回放獣されたトラ吉のように交通事故に遭って命が助かるのは稀なため、これだけの数の交通事故はツシマヤマネコにとって大きな脅威となっています。スーパーなどにはこのような無事故記録看板も設置されています。(8月19日撮影)
この写真を撮った後、残念ながら事故がありリセットされてしまいましたが、この記録をどんどん伸ばしていきたいですね。
対馬から離れた場所に住んでいると、こういった話を聞いても他人事に感じてしまうかもしれませんが、タヌキや鳥類など多くの身近な動物たちも交通事故の被害にあっています。
対馬に行った時はもちろんですが、普段から人にも動物にも優しい運転をみんなで心がけていきましょう!
飼育展示係 宮本