更新日:2023.10.17たくさんの感謝をガンターに
たくさんの感謝をガンターに
皆さん、こんにちは。
動物園からのお知らせのとおり、10月13日にスマトラトラのガンターが永眠いたしました。
10月3日に食欲減退が見られ、検査をしたところ腎臓が悪いことが分かりました。そこからはエサを全く受け付けなくなり、少しでも何か食べられないか様々なエサを与えたり、ガンターが過ごしやすいように部屋を暖めたりと試行錯誤しましたが、そのまま急ぎ足で旅だってしまいました。
ガンターはあまり展示場には出ない個体で、「幻のトラ」と呼ばれていました。
ガンターと言えば、真ん丸な目とスマトラトラらしい立派なあごの毛が印象的でした。
また、オスらしい大柄な体格と大きな頭もカッコよく、ガンターを初めて見る方に「頭大きいね~」と言われていました。
実はあまり知られていないガンターの愛称の由来ですが、インドネシア語でカミナリという意味だそうです。カミナリのように大きな声でほえていることから、名づけられたのでしょうか。
私が4月に担当になってからは、ガンター(カミナリ)の名に恥じないほどたくさんほえられ怒られました。
「カミナリ親父だ...」と思いながら聞いていたわけですが、今ではその大きな声が懐かしく、寂しく感じます。
ガンターは国内のスマトラトラの繁殖・飼育にも大きく貢献しました。
デルと3回の繁殖に成功しています。
1回目の子どもたち
2回目の子どもたち
3回目の子ども、ムジュ。
現在のガンターの子どもたちの多くは、全国の動物園へ移動し活躍しています。
そして、ガンターは他のトラに対してとても優しい個体でした。
今まで同居をしてきた際、メスが嫌がるときには無理にいかず、距離を守っていたようです。
中でも、デルのことは大好きで毎日朝と夕方に鼻を鳴らして挨拶をしていました。それは、体調を崩してからも変わりませんでした。
デルが展示場に行くときは顔を上げて見送り、展示場から帰ってきたときは体がだるくても立ちあがり、鼻を鳴らして挨拶をしていました。デルもガンターの挨拶に応え、格子越しにすり寄る様子が見られました。
デルへの挨拶は死亡する前日も行われ、満足に体が動かない中、なんとかしてデルの近くに行こうとしていました。そんな姿を見ていると胸が押しつぶされる気持ちになりましたが、「本当にデルのことが好きなんだな」と思う瞬間でもありました。
飼育を担当したこの半年間で、ガンターは様々な姿を見せてくれました。
ものすごく大きな声で怒る姿。
デルのことが大好きな姿。
獣舎にお客様が来ると急におとなしくなり、猫をかぶる姿。
ムジュのおもちゃを見て「それいいな~」とでも言っているようにうらやましそうに見ていた姿。
実際におもちゃのブイを与えると、「これオレの」と言わんばかりにずっと遊んでいた姿。
絶食日はお肉がないことを知っていて、なかなか寝室に入ってきてくれない姿。(ズーラシアでは肉食動物の健康管理のため週に一度絶食日を設けています。)
大きくて立派なガンターは、その見た目以上に魅力的な心を持っていたように感じます。
皆さまも知らず知らずの内にその魅力に惹かれ、ガンターはたくさんの方に愛されてきたのだと思います。
ガンターが死亡した朝、たくさんの感謝を伝えてきました。
半年間で様々な学びを教えてくれたガンター、今はただゆっくりと眠りについてくれていることを願うばかりです。
また、ガンターを通してスマトラトラの魅力に惹かれた方々の心の中で生き続けてくれたら嬉しく思います。
ありがとうガンター
※おねがい
献花台を設置する予定はございませんので、献花等動物園にお寄せいただくことはお控えいただきますようお願いします。
そして、SNS上にハッシュタグ「#ガンター幻のトラ」をつけて、ガンターの写真と思い出をたくさんアップしていただければと思います。
幻のトラということもあり、なかなか展示場での写真はないかもしれませんが、みなさまがお持ちのガンターの写真を共有し、ガンターを偲ぶ機会とさせていただければと思います。
ガンターを見たことのなかった方も、いろいろな姿を見てガンターを知り、一緒に思いを馳せていただければ嬉しいです。
5年目飼育員 脇田