更新日:2024.03.06【あみあみ便り】少しずつ&頻度を増やして
【あみあみ便り】少しずつ&頻度を増やして
キリンの「そら」の誕生日にたくさんのお祝いの言葉をいただき、本当にありがとうございます。
みなさまの言葉に感謝しつつ、また一年頑張ろうと思う力を頂いています。
さて、これからもキリンたちを応援していただくためには、
まずはその動物を知ってもらうことが大切だと思っています。
そこで、今回は基本に返って「キリンたちの餌」について、
お話していきたいと思います。
皆さまは、キリンの餌が何かはご存じですよね??
青々とした木の葉ですね。
(公園で木の葉を見ると、美味しそうだな~とか、剪定などをしている場面に出くわすと、
欲しい!!と思ってしまう職業病を発症するくらい木の葉のことは四六時中考えています)
野生では100種類くらいの樹種を食べるそうですが、
野毛山では通年を通して確保できるスダジイやシラカシ、
ヤマモモなど中心に1日約20本与えています。
そのほかにも剪定などで出たネズミモチ、サクラ、マテバシイ、
アラカシなど普段のメニューにはない種も適宜与えています。
市内の公園などで剪定があった際には、動物園に連絡をいただけるようになり、
木の葉がキリンの寝室いっぱいになることも!!
しかし、野生のキリンたちに比べて、動物園では木の葉の種類や量が限られるため、
栄養バランスが偏ってしまったり、十分な量を確保したりすることができないため、
動物園では、木の葉以外に牧草やペレットなども与えています。
では、これらの木の葉や牧草、ペレットといった餌をどのように与えているかというと...
野毛山では朝、午前、昼過ぎ、午後、夕方と最低5回に分けて給餌します。
しかも...ただの5回ではありません!!
それぞれ複数個所に設置します。展示場には20か所程度、寝室には10か所程の設置場所があります。
そして...さらに...回数を増やすために餌によってはフィーダーや自動給餌器を使用して与えます。
雨天など寝室で過ごす場合は、さらに回数を増やします。
キリンたちへの餌の与え方のキーワードは「少しずつ&頻度を増やして」です。
1度に1日量を全部与えても、少しずつ何度かに分けて与えても、
結果としてお腹に入る量は変わらないですが、与える影響は異なります。
キリンは1日のうち12時間以上を採食や反芻に費やします。
しかし、1度に与えてしまえば、すぐに食べ終えてしまいます...
また、キリンは一度胃の中に入れたエサを口の中に戻して咀嚼し直す「反芻」を行うのですが、
栄養補助食品的に与えているペレットは、木の葉に比べて咀嚼や反芻を引き起こしにくい餌になります。
さらに、これを一度に大量摂取するとルーメン(第一胃)に影響したり、
咀嚼が少ないことで唾液の分泌が低下したりしてしまいます。
(反芻しているときは、頬がプクッと膨れ、もぐもぐと口を動かします)
では...どうするかというと、「少しずつ&頻度を増やして」給餌します。
これにより、ペレットが与える影響を小さくすることができます。
さらに、フィーダーで給餌すれば、舌を使うことで唾液の分泌を促し、少しずつ食べることにもつながります。
(籠にネットが付いているので、舌を入れてペレットを取り出します)
また、複数個所に設置することでは、キリンたちの運動量を増やすことができます。
よく歩くことによって、お腹の動きを良くしたり、蹄が削れたりします。
(展示場のいろいろな場所に設置します)
どのように与えるかは、担当者次第。つまり、かなり責任重大なのです。
そのため、どんなものを食べ、どんな風に食べるのか...それがどんな影響を与えるのか...
どの動物でも考えなければなりません。
そして、それは本当に効果があるのかも検証することも必要です。キリンでは昨年度より、
大学との共同研究で学生さんたちが行動調査してくれています。強い味方が付いています!!
「給餌」とは、ただ餌を与えるだけではありません。大切な健康管理のひとつです。
動物たちが心も体も健康であること。これが一番基本で、一番大切なことだと思っています。
そして、そんな動物たちが魅せてくれる毎日が来園者の皆さまの心を動かしてくれるのだと思います。
現在、野毛山動物園においては、リニューアルが検討されています。
動物園は動物たちの住まいです。
ここで暮らす動物たちが心も体も健康であるために、
改めて皆様と一緒に動物園について考えていただく機会になればと思います。
最後に、キリンたちの健康のために、これからも模索しながら、
キリンたちの食を極めたいと思います!!
(飼育展示係 落合)