更新日:2021.12.09ともだち?それとも......
ともだち?それとも......
水辺の景色の中にひときわ輝く青緑の背中を見つけることがあります。小さいので気づかず見逃してしまうこともありますが、視界に入るとその輝きと澄んだ色に目を奪われます。
その名はカワセミ。
まさに飛ぶ宝石と言っても過言ではないこの姿を見る楽しみもありますが、ひとたびカメラで美しい瞬間を捉えてしまうとさらにこの素早い宝石の一瞬を捕まえたい衝動に駆られて大きなズームレンズで追い続けるようになってしまう一眼レフオーナーキラーでもあります。
▲青く輝くカワセミの背は否が応でも目立ちます。園内巡回中なので巨大ズームレンズではなくスマホです。
そんな依存性のあるカワセミですが、宮沢賢治の短編小説「やまなし」では主人公のカニのきょうだいの頭上にいた魚をさらっていく怖い存在として描かれます。小さくてアイコン的存在ですが立派にハンターです。
野毛山動物園の大池にもカワセミがやってくるのですが、今年の春夏は水位がやや高かったせいかあまり寄りつきませんでした。カワセミは水に飛び込み、魚をくちばしでつかんですぐに飛び立つので、水が浅い所のほうが魚が深い方に逃げられずカワセミに有利です。
▲撮ると流星のようになってしまうほど速いカワセミのダイブ
11月になって、高病原性鳥インフルエンザの対策で大池のカナダガンを園内の建物に引き上げました。大池は水位を下げて、ウイルスを持っている可能性のある渡り鳥が集まらないようにしています。そんな浅い池にカルガモは時々来ていますが、浅くなったので来るようになったのがアオサギとカワセミです。
11月のある日、大池にアオサギが来ているのが目に止まりました。アオサギは大きなサギで、白っぽいので来たらすぐに気づきます。
「アオサギが来ているということは、カワセミも来ているんじゃないか?」
いました。アオサギから少し離れた木の枝に止まっているカワセミの色は遺憾なくその存在感を発揮します。
▲アオサギがいると木の枝にカワセミを探します
なぜアオサギが来たらカワセミも来るのでしょうか。
■ともだち説
アオサギとカワセミはなかよしでいつも一緒......?しかし今年のアオサギは昨年のアオサギとは違うようで、どうやら若い個体です。つきあうともだちを代えた......?普通に考えてともだちではなさそうです。
■追っかけ説
アオサギの行く所、魚の影あり。ついていけば、いいエサ場に行けるかも?確かにアオサギも肉食性なので、アオサギの行く先には魚の多い場所もありそうです。しかしアオサギはカワセミが食べられないような生きものも食べるので、ついていってみたらカエルやザリガニを食べてばかりだったなんてこともありえます。
■出先でばったり説
エサが似ているので、エサが取れそうな水場に行ったら会った、ということは普通にありそうです。
カワセミはその体格より大きな魚は捕まえられないので、人の目から見ると小さめの魚がエサになります。アオサギがエサを探したり追ったりするときにその付近でじっとしていた小魚が追われるように動いて、それがカワセミにとってのゲットチャンスになるということは考えられます。少なくともカワセミはアオサギをちょっと意識しているのかもしれませんね。
調査をしているわけではないのですが、数日後に大池の横を通りかかったら、アオサギがいてカワセミがいない日とか、カワセミがいてアオサギがいない日などもありました。かならずセットで、というわけではないらしいことは分かりました。
見ていて飽きないカワセミですが、見える位置を占拠することなく交代でご覧になってください。時節柄、密にならないようにご協力をお願いいたします。
▲このカワセミは撮りやすい位置に来たように見えてこの後、魚を見つけて水面にダイブします。
[桐]